南極大陸東部で最大のトッテン氷河(Totten Glacier)が、下のほうから急速に解けており、すべて解けると海面が約3~6m上昇する可能性が指摘されていました。
研究者たちは何十年も前から、温暖化とともに地球の極氷の量が減少すると予想してきましたが、近年の衛星データやモデル、現地調査などにより、その減少がどの予想よりも速く進んでいることが明らかになりました。さらに、南極で氷の減少が加速している原因が、気候変動のなかでもあまり注目されていなかった「風」にあるとする証拠が次々に見つかっています。
- Wind causes Totten Ice Shelf melt and acceleration(Science Advances 01 Nov 2017)
研究チームは海洋風の記録と、近くに浮かせたセンサーから得られた水温および塩分のストリーミングデータを衛星画像と比較することにより、トッテン氷河地点のサーモクラインを長期にわたって追跡。その結果、西からの風が強いときは、温度の高い水が勢いよく氷河に流れ込むことが解りました。風が東から吹くと、サーモクラインが再び沈み込み、融解は止まったそうです。
テキサス大学に在籍する科学研究員で、今回の研究のリーダーを務めたチャド・グリーン氏は「地球温暖化による海面上昇が空気を直接温めて上から氷河を融かすだけでなく、風によって海の各所で熱が移動するだけで氷河が下から解けることもあるというのは、実に興味深いものです」さらに、「南極大陸東部の沿岸に沿って吹きつける西風が、今後100年にわたってかなり強くなると予想される」と述べています。
「風」と海面上昇の研究はこれからですが、すでに海水はトッテン氷河の棚氷の端から、その岩盤を約125kmも内陸に進んだ地点まで等高線沿いに谷を刻んでおり、その深さは海面下3km以上に及んでいます。(動画を参照)
- Australian Antarctic Division(Website)
色が変化しているところは、風の影響を受けて温かい海水の湧昇(Upwelling)が起きているゾーン。数ヶ月のタイムラグ後にトッテン氷河(黄色の点)の融解が増えます(2000年から2017年)