バイデン米政権は、ウクライナに新型の対艦ミサイルを供与し、ロシアの黒海封鎖を打ち破る手助けをすることを検討しているようです。3人の米政府高官と議会関係者2人は、米ボーイングのハープーン(Harpoon)やノルウェー企業と米レイセオンのNSM(Naval Strike Missile)の2種類の対艦ミサイルをウクライナに直接供与、もしくはミサイルを保有する欧州の同盟国から供与する案が活発に検討されていると述べています。
- 米が露の黒海封鎖打破へ、ウクライナに対艦ミサイル供与=関係者(5/20 ロイター)
- ウクライナの倉庫に出荷できない小麦の山、農家の目に涙 食料危機の懸念(5/20 BBC News)
<追記:5/30, 2022>ウクライナは、デンマークからハープーン対艦ミサイルを、米国から榴弾砲を受け取っているとオレクシー・レズニコフ国防相は述べています。ロイターはハープーンの供与について、ウクライナが海上封鎖を解き、穀物輸出などを再開できる可能性につながると伝えています。
- ウクライナ、デンマーク-アメリカからハープーンミサイルと榴弾砲を受領(5/28 voi.id)
ハープーンは米国や日本など30ヶ国以上が採用しており、西側諸国ではフランスのエグゾセ(仏:Exocet)と市場を二分するベストセラーとなっています。課題として、本来は艦対艦ミサイルなので、陸上から発射するためのプラットフォームを確保しにくいというのがあります。2人の米政府高官は、米海軍艦艇から発射装置を引き抜いて一緒に陸揚げする方法が模索されていると語っています。また、対艦ミサイルをウクライナ戦闘機に搭載することも考えているとされます。
英国防省によると、現在ロシアの艦艇は黒海の作戦区域に潜水艦を含めて約20隻。ハドソン研究所の海軍関係専門家ブライアン・クラーク氏は、ハープーンのように射程が100キロを超える対艦ミサイルが12基から24基あれば、ロシア艦艇に十分脅威を与えられ、ロシア側に封鎖解除を決心させられると指摘します。「もしもプーチン大統領が封鎖を維持しても、黒海に隠れ場所がない以上、ウクライナ側はロシア海軍の主力艦艇を葬り去ることができる」と強調しています。
NSMミサイル(ノルウェー語: Nytt sjømålsmissil、英: Naval Strike Missile)は、ノルウェーのコングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース社が開発した対艦ミサイルです。
NSMミサイルは射程250キロで、作戦に必要な訓練は14日弱です。NATO諸国が地上発射装置を貸し出すこともできるため、配備に向けたハードルはより低いとみられています。米議会筋によると、ノルウェーがウクライナにNSMを寄贈する選択肢もあり、この構想はノルウェーの議会メンバーから支持されているようです。
ハープーンやNSMミサイルといった米国製品が絡む兵器への要請はすべて米国務省が承認する必要があります。