米国防総省は、ロシアがウクライナ東部で想定した戦果を上げられていない原因として、ロシア軍戦車が抱える欠陥を指摘しています。ロシア軍機甲部隊は、主力戦車として多数のT-72を投入していますが、湾岸戦争時から米国では Jack in the BOX(びっくり箱)と揶揄されていた設計上の構造的欠陥を把握していました。ウクライナでも被弾時に搭載した弾薬に引火して大爆発し、砲塔が箱の蓋を開けた様に裏返しや横倒しになったり、砲塔部分が上空に吹き飛ぶ破壊現象が頻発しています。
- Jack-in-the-box effect(en:Wikipedia) びっくり箱効果
- まるで「ビックリ箱」、ウクライナで戦うロシア軍の戦車が抱える設計上の欠陥とは(4/29 CNN)
2022年ロシアのウクライナ侵攻において、大量の戦車の残骸はウクライナへの侵攻が計画通りに進んでいないことを示しています。ベン・ウォーレス英国防相は推計で最大580台と発表しています。ゼレンスキー大統領は30日、同国の軍がこれまでにロシアの戦車1,000台あまりと航空機200機近く、装甲戦闘車両2,500台近くを破壊したと述べています。
構造的な欠陥は搭乗員を3名とした、砲弾の自動装填(そうてん)システムに関連します。最新の西側の戦車と異なり、ロシア軍の戦車は回転式砲塔の内部に多数の弾薬を搭載しています。被弾の際の危険は極めて大きく、直撃ではない場合でさえもそこから連鎖反応が始まり、搭載する最大40発の砲弾がすべて爆発する恐れがあります。
ロシアがT-72の後継型として装甲をアップグレードして1992年に投入したT-90、さらにウクライナ侵攻にも使用しているT-80戦車についても、同様の自動装填システムを採用しているので、被弾時に弾薬に引火する弱点を抱えています。
戦車内の爆発による衝撃波の威力で、砲塔は2階建ての建物ほどの高さにまで吹き飛ぶこともあります。こうした欠陥に対し戦車の搭乗員はなす術がないと、英国陸軍の元将校で現在は防衛産業アナリストのニコラス・ドラモンド氏は指摘します。
米国および一部の同盟国の軍隊が使用する大型の戦車「M1エイブラムス」は、カルーセル式の自動装塡を採用していません。4人目の搭乗員が壁で隔てられた弾薬庫から砲弾を取り出して主砲へ装填します。弾薬庫にはドアが設置され、搭乗員はそのドアを開閉しながら個々の砲弾を発射していきます。戦車が被弾しても、砲塔内でむき出しになっている砲弾は1発のみとなる公算が大きく、戦車内の誘爆リスクを最小に抑えています。(下記 YouTube:日本語字幕付参照)