6月8日、米連邦捜査局(FBI)、欧州刑事警察機構(EUROPOL)、オーストラリア連邦警察(Australian Federal Police: AFP)は、FBIがAFPの支援を受けて独自開発したE2E暗号化おとり暗号化アプリ(ANOM)をインストールしたスマホを闇市場で販売、やり取りされるメッセージを傍受することにより国際犯罪組織を多数摘発したと発表しました。メッセージには殺害計画、大量の麻薬密売、銃の配布などが含まれていたとされます。FBIが2018年から密かに運営していたプラットフォーム(ANOM)から解読されました。この長期かつ国際的な秘密調査を、FBIとEUROPOLは Trojan Shield(トロイの盾)、AFPは Operation Ironsideと呼んでいます。
- FBI Targets Encrypted Platforms Used by Criminal Groups(6/8 FBI)
- AFP-led Operation Ironside smashes organised crime(6/8 Australian Federal Police: AFP)
2018年3月にFBIは、組織犯罪グループや麻薬密売グループが、犯罪に使用した暗号化通信サービス(Phantom Secure)を摘発しました。ファントム・セキュアは、市販スマホを改造して通話、テキストメッセージ、インターネット、GPS などの一般的な機能をすべて削除し、暗号化されたメッセージアプリのみを動作させ、解読や盗聴の影響を受けない通信手段として犯罪グループに販売していました。
FBIがファントム・セキュアを摘発したことから、犯罪グループは安全な通信手段を探していました。そこで、AFPとFBIは秘密裏に暗号化プラットフォームをおとり捜査に使うことを計画し、暗号化通信アプリ(ANOM)を開発。おとり暗号化アプリ(ANOM)をインストールしたスマホを情報提供者や口コミで販売、100カ国以上で約300もの犯罪組織に1万2,000台以上が配布されました。
- International Criminal Communication Service Dismantled(3/16 2018 FBI)
ANOM経由で、FBIは18カ月で2,700万件のメッセージを傍受・復号したということです。EUROPOLによると、摘発は16カ国で800人以上を逮捕し、数千キロの麻薬と銃器250丁、高級車55台、4,800万ドル(約53億円)相当以上の現金・暗号通貨を押収しました。これからさらに多数の逮捕を計画しています。
FBIは「この作戦の目的は犯罪組織の情報収集だけでなく、こうした暗号化ネットワークへの(犯罪者による)信頼を低下させることにある。世界の犯罪者が、自分が使っているプラットフォームを運営しているのがFBIなどの法執行機関なのではないかと恐れることを望んでいる」と語りました。
- 国際おとり捜査で800人超を逮捕 FBIが端末配布し情報傍受(6/9 BBC News)
市販品を改造した暗号化スマホとしては、EncroChat(エンクロチャット)も犯罪グループが犯罪計画を行うために使用していた暗号化チャットアプリ、サービス・プロバイダでした。2020年6月から7月にかけ、欧州刑事警察機構(Europol)による欧州全体での調査、侵入、逮捕が行われています。英国家犯罪対策庁(National Crime Agency)の報告では、この大捕り物により欧州で800人以上を逮捕し、多数の薬物、現金、銃火器を押収したと報告されています。
- EncroChat(エンクロチャット)(Wikipedia)