5月27日、英国防省は戦況分析で、ウクライナ南部への侵攻を担うロシア軍部隊がここ数日、約50年前に製造されたT-62戦車を前線に配備した可能性があるとしました。「ほぼ間違いなく対戦車兵器に対して脆弱」だと指摘し、近代装備が不足している現状を表しているとの見方を示しています。また、ウクライナ・プラウダ(Ukrayinska Pravda)によれば、ロシア軍はこれまで1,322両の戦車を失っており、これらロシア戦車の損失で確認されていたのはT-64、T-72、T-80、T-90の4つの系統で、T-62系の戦車は確認されていません。
- ロシア軍、50年前の戦車配備か 英分析「近代装備が不足」(5/27 共同通信)
- Russia to Prepare Soviet Era T-62M Tanks to Replenish Reserves(5/23 Defense Express)
T-62は前モデルのT-55を発展開発したモデルで1957年にプロトタイプが登場。当初はT-55と同じ100mmライフル砲を搭載するも、1962年の量産モデルではより強力な115mm滑空砲を搭載しています。滑空砲を搭載した主力戦車としては初であり、これは当時の米軍の主力戦車であったM48/M60パットンの105mmライフル砲よりも強力でした。
1962年から1975年かけて計22,000輌が生産され、これはT-72戦車の25,000輌に次ぐ多さです。
- ロシア軍歴代主力戦車の比較(Wikipedia)
2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻の際には、開戦から間もなくしてロシア軍で運用する戦車の消耗が激化したため、3月末の時点で予備兵器として保管されていたT-62Mの再導入が試みられています。
T-62(1975年型)の近代化改修仕様で、デジタル式射撃管制装置(FCS)を追加、増加装甲を装着、エンジン増強、さらにアクティブ式対戦車ミサイル防御装置を追加したバージョンもあります。T-62Mは1ヶ月ほど掛けて整備が行われ、5月末頃には復帰したT-62Mから編成される大隊戦術群がロシア領内に配置されたとみられています。
設計上の欠陥を抱え、大量破壊されたロシアの主力戦車T-72。後継型として装甲をアップグレードして1992年に投入したT-90、ウクライナ侵攻にも使用しているT-80戦車についても、自動装填システム(搭乗員3名)を採用しているので、被弾時に弾薬に引火する弱点を抱えています。