ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社(Rosatom)は、20年近くかけて建造してきた世界唯一の海上浮揚式原子力発電所:アカデミック・ロモノソフ(floating power unit Akademik Lomonosov)が、ムルマンスクからロシア最東端のチュクチ自治管区北部にある港湾都市ペヴェク(Pevek)へ向けて出航したと発表しました。ペヴェク地域の電力供給の中心となり、築44年のビリビノ原子力発電所とチャウンスカヤ発電所の能力を置き換えます。ロシア科学アカデミー会員のミハイル・ロモノーソフに因んで名づけられています。
- First-of-a-kind floating nuclear power unit Akademik Lomonosov leaves Murmansk for Pevek(23 August, 2019 Rosatom)
- ロシアの海上原発、北極海へ出発 「海上のチェルノブイリ」と批判も(2019.07.01 CNN)
アカデミック・ロモノソフは長さ144m、幅30mほどの船であり、排水量が21,500トンで、69人の乗員がいます。発電のために、2基の改修型KLT-40Sを積んでおり、70MWの街(住民20万人)の電力と300MWの熱を供給可能となっています。
この海上浮揚式原発については、核燃料の定期的な廃棄や、巨大な波に襲われた場合の対応などを巡って不安が付きまといます。国際環境NGOグリーンピースは、ロモノソフのことを 1986年に壊滅的な事故を起こしたチェルノブイリ原発にちなんで「氷上のチェルノブイリ」「海に浮かぶチェルノブイリ」と形容します。
ロモノソフの環境保護対策責任者は、チェルノブイリ原発とロモノソフとでは、原子炉が稼働する仕組みが異なると説明します。「北極海の海上に停泊して常に冷却され、冷却水が欠如することはない」と強調します。
プロジェクト担当者は、2011年の東京電力福島第一原発事故の教訓は学んだと主張、「たとえ巨大津波に襲われたとしても、係留が外れることはない。もしも陸上に乗り上げた場合でも、バックアップシステムによって24時間電力供給なしで原子炉の冷却を継続できる」と話します。
これに対し、原子力プロジェクトと環境への影響を調べている非政府組織(NGO)ベローナの専門家は、原子炉2基を搭載した施設が、もしも津波によって打ち上げられた場合、24時間で惨事を防ぐことはできないと指摘しています。
World’s first floating nuclear rig departs for maiden voyage(CNN)
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