3月18日、コンピュータ科学分野の国際学会 Association for Computing Machinery(ACM)は、2019年ACMチューリング賞受賞者を発表しました。ピクサーによる長編3DCGアニメーション映画「トイ・ストーリー」の生みの親ともいえるエドウィン・キャットマル(Edwin Catmull)氏と、パトリック・ハンラハン(Pat Hanrahan)氏に授与しました。キャットマル氏とハンラハン氏は、二人合わせて8つのアカデミー賞を受賞。映画のコンピュータ・アニメーションや、特殊効果で用いられるツールや技術に関する功績によるものです。
- Pioneers of Modern Computer Graphics Recognized with ACM A.M. Turing Award(3/18 ACM)
- コンピューター科学の栄誉「チューリング賞」は、かくしてピクサーを支えたCG研究者に贈られる(3/20 Wired.jp)
キャットマル氏とハンラハン氏は、多くのハリウッド映画で活用された3DCGレンダリング・ソフトウェア RenderManを開発、ツールや技術を拡張しました。映画製作や仮想現実(VR)などの新しいエンターテインメントにおけるコンピュータ・グラフィックスに関する先駆的な研究が評価されました、
ACMチューリング賞は、コンピュータ科学分野のノーベル賞とも呼ばれ、Googleからの財政的支援により100万ドル(約1億800万円)の賞金が授与されます。
また、4月1日にコンピューティング技術開発に多大な貢献をした個人に贈られる、2019年ACM賞(ACM Prize in Computing)の受賞者を発表しました。人工知能AlphaGoを開発したことで知られる Google傘下の人工知能企業 DeepMindのデビッド・シルバー(David Silver)氏です。受賞者にはインドの大手IT企業Infosysから25万ドル(約2,685万円)の賞金が贈呈されるとのことです。
- ACM Prize in Computing Awarded to AlphaGo Developer(4/1 ACM)
- 2600万円以上の賞金が囲碁AI「AlphaGo」の開発者に贈られる(4/2 Gigazine)
DeepMindの主任研究者であるシルバー氏が率いる開発チームは、伝統的な木構造検索、ディープラーニング(深層学習)、強化学習、大規模なコンピューティングなどを巧みに組み合わせて、AlphaGoのアルゴリズムを作り上げました。
ACMのCherri M. Pancake会長は「シルバー氏ほどAI分野に興奮をもたらした研究者はいません。人間と機械との競争は長年にわたりAIの宿願だったので、AlphaGoが囲碁世界チャンピンのイ・セドル氏を破った2016年3月の対局は、テレビ中継を介して全世界の人々が見守りました。
しかし、それもシルバー氏がもたらしたインパクトの始まりに過ぎず、同氏の深層強化学習の知見はその後、イギリスの電力網の効率改善、Googleのデータセンターにおける電力消費の削減、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙探査機の軌道計画策定など多くの分野で役立てられています」と述べて、シルバー氏の研究を賞賛しました。
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