ロシア軍は、ウクライナ侵攻初日の2月24日にチェルノブイリ原子力発電所を制圧。3月31日に撤退するまで、原発周辺の高放射線地域を1か月以上占領していました。ロシア兵が汚染度の高い「赤い森」で塹壕(ざんごう)を掘るなどして、衝撃的な量の放射線にさらされたと推測されます。原子炉の廃炉作業と、石棺(4号炉を覆うコンクリートの建造物)の管理が行われている閉鎖中の原発を占拠する意図は?
- Russian Blunders in Chernobyl: ‘They Came and Did Whatever They Wanted’(4/8 The New York Times)
- 素手で放射性物質 ロシア兵、チェルノブイリで相当量の被ばくか(4/11 毎日新聞)
1986年4月26日のチェルノブイリ原子力発電所事故により、放出された高レベルの放射性物質を取り込んで枯死したマツが赤茶色に見えたので「赤い森」と呼ばれました。事故後の汚染除去作業で、赤い森の木々は伐採され埋め立てられましたが、この場所は現在でも世界で最も汚染された地域の1つになっています。
ウクライナの原子力企業エネルゴアトム(Energoatom)のトップ、ペトロ・コティン総裁代理は、ロシア軍がウクライナ各地の原発や核施設を攻撃し、制圧した理由について、「ウクライナの重要なインフラ、工場などを破壊したり、我が物にしたりすることが目的で、原発もその一環だろう」と述べています。
- Рыжий лес(ru:Wikipedia)
いくつかの謎や疑問もあります。稼働していない閉鎖中のチェルノブイリ原発を長期に占拠する意図、ロシア軍の利益は? さらに汚染地帯と知られた汚染土の「赤い森」を、重機を動員し粉じんを舞い上げて整地、また塹壕なども掘っています。汚染された粉じんの中で素手でも作業していたようです。何をしようとしていたのでしょうか?
ウクライナの首都キーウ制圧に向けた地理上の要衝の確保。または放射性物質を使った偽旗作戦(実際に盗んでいます)の実行? さらには仮設の管理棟みたいなものもあるので、ロシア軍の訓練場、あるいは遺体埋設場などの用地とも推測できます?
短期に決着させる予定だったのが、ズルズルと伸びてしまったのが実際のところではないしょうか? いずれにしてもロシア軍とロシア兵の放射線や汚染土に対する「無知の代償」が憂慮されています。
- チェルノブイリを掘り返したロシア軍 現地企業トップが見る撤退理由(4/2 朝日新聞)
- ロシア軍、チェルノブイリから放射性物質盗む ウクライナ(4/10 AFP時事)