インターネット上の多くのニュースサイトは、トラフィックの少なくとも半分を「検索エンジン」から獲得しています。ChatGPTなどの高度なチャットボットによって生成したより充実した文章による出力結果が、ニュースサイトのトラフィック(閲覧数)を大きく減らし、収入も減少させることを懸念しています。多くの新聞・出版社はタスクフォースを設けて選択肢を検討、業界団体を通じてチャットボットのコンテンツ利用に対して対価を求めることを計画しています。
- Publishers Worry A.I. Chatbots Will Cut Readership(3/30 Katie Robertson / The New York Times)
- メディア大慌て「チャットボット」のヤバい影響(4/11 The New York Times / 東洋経済)
Bustle、Nylon、RomperなどのライフスタイルとカルチャーWebsiteを運営するBDGのCEO Bryan Goldberg氏は「多くの情報が Wikipedia化される」と言うこともできるとして、「無限の数の質問に対して Wikipediaスタイルの回答にまとめることは、いまのオープン・ウェブの多様なコーナーを破壊することになります」と述べています。
コンテンツ発行者と検索エンジンの関係は対等ではありませんが、おおむね互恵的な関係です。検索サイトは検索結果に信頼できる情報源が表示されることがメリットになり、発行者側は検索エンジンが生成するサイトへのトラフィックから利益を得ます。Googleからの検索トラフィックは、多くのサイトへの訪問全体の半分以上を占めていると、メディア・ビジネス・ニュースレターThe Rebootingを執筆している Brian Morrissey氏は述べています。
高度なチャットボットについて、Vogue、Vanity Fair、Glamour などを所有する Condé NastのCEO Roger Lynch氏は、AIが生成するコンテンツのクリエイターに報酬を与えるべきとしています。コンテンツ発行者の有利な点は、視聴者がネット上でどの情報を信頼すべきかを判断するのがすぐに難しくなるため、「信頼できる情報源にアクセスする必要に迫られる」とも述べています。
The New York Timesを含め世界から2,000を超す新聞社や出版社が加盟する業界団体ニュース・メディア・アライアンス(News Media Alliance)は、AIシステムの利用と開発の指針となるべき原則と、それに関する規制づくりに取り組んでいます。原則の草案では、AI開発のためのコンテンツ使用には「交渉による合意と明示的な許可」が必要という内容になっています。
このガイドラインはまた、IT企業に対し高品質で信頼できるジャーナリズムのコンテンツとブランドに「十分な価値を提供する」ことを求め、著作権法に例外を設けるような新しい法律や規制については、新聞・出版社に対する保護を弱めるものであってはならないとしています。
ジェネレーティブAIの台頭に伴い、文化遺産の記述、保存、普及にAI(人工知能)をどのように使用できるかについての関心が高まっています。インターネット・アーカイブ、クリエイティブ・コモンズ、およびウィキペディア財団のリーダーが、AIが多様な視点を反映し、文化的理解を促進し、倫理的原則の尊重、そして個人情報保護や権利者の同意を確実にする方法を含めて、公共の利益の価値が文化遺産における AIの開発と展開をどのように形作ることができるかについて議論します。
- Generative AI Meets Open Culture(4/12 Internet Archive) 5月2日 Online
- Tags: ChatGPT(Nobuyuki Kokai)
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