映画監督のジェームズ・キャメロン氏は、米国による広島と長崎への原爆投下を題材にした映画の構想に言及し、両方の投下を経験した二重被爆者の山口 彊(やまぐち・つとむ)さんと交わした約束が製作理由の一部になっていることを明らかにしました。映画は山口さんなどを取材した作家チャールズ・ペレグリーノ(Charles Pellegrino)氏による書籍「ゴースツ・オブ・ヒロシマ(原題:Ghosts of Hiroshima)」を下敷きとして制作される予定です。CNNのクリスティアン・アマンプール記者とのインタビューで述べています。
- 広島・長崎への原爆投下描く書籍、ジェームズ・キャメロン監督が映画化へ 「神聖な義務」(8/7 CNN)
- The Last Train from Hiroshima(en:Wikipedia)

by Charles Pellegrino (Author) / Amazon
キャメロン監督は、広島と長崎で2回被爆した二重被爆者である生前の山口さんに会い、被爆体験を聞いた時のことを振り返りました。山口さんは原爆についての映画を撮ろうとしていることを知り、手を握って「自分はできる限りのことをした。ここからはあなたに託す」と語っています。
CNNのインタビューでキャメロン監督は、「ある意味で山口さんからバトンを手渡されたのだと考えている。神聖な義務だ」と語りました。一方で、「自分がこれから作り出さなくてはならない映像に恐怖を覚えているのが正直なところだ」とも打ち明けています。
- The Last Train from Hiroshima(Book/Charles Pellegrino)(en:Wikipedia)
キャメロン監督は、2010年にこの本を長編映画化する可能性についてオプション契約を結んでいます。

第二次世界大戦中の事象を映画化するに当たっては、ノルマンディー上陸作戦を描いた「プライベート・ライアン」を撮ったスティーブン・スピルバーグ監督にも話を聞いたとそうです。作中のオマハビーチへの上陸シーンを可能な限り激しく撮ろうとしたというスピルバーグ監督の言葉に触れ、キャメロン監督はそこに撮影手法についての一つの手掛かりがあるとの考えを示唆しました。
こうした手法の結果、「自身の映画は鑑賞するのが”つらい作品”になるかもしれない」とキャメロン監督。それでも、これこそ自分が作らなくてはならない映画だとの思いを強調し、「誰もやらないから自分がやる」「他の誰かのために立ち上がって行動する”思いやり”の原則だ」と語っています。
2005年、90歳を直前に最愛の息子を失った山口さんが、国内外に発信しようと活動を始め、国連での講話を皮切りに精力的に訴えかけを行ない、自ら胃がんで亡くなる前に、ジェームズ・キャメロン監督と対面した様子が収録されています。
- 二重被爆(2006年製作/日本/作品時間60分)(asiandocs.co.jp)
- 二重被爆〜語り部・山口疆の遺言(2011年製作/日本/作品時間70分)(asiandocs.co.jp)
- Nijû hibaku ~ Kataribe Yamaguchi Tsumotu no yuigon(IMDb) Ratings: 7.1

父のために畑にトマトを取りに走って行く時、ふと顔を上げた瞬間、白い幽霊の行列が目の前を行進していた。その場は逃げたが、後から考えてみると、それは皮膚がはがれて垂れ下がった腕を前に出して歩く、灰をかぶった被爆者であった。被爆体験証言者 笠岡 貞江(かさおか さだえ)氏 絵の作者 髙山 愛季(たかやま あき)氏(広島市立基町高校3年)
- 基町高等学校の生徒と被爆者との共同制作による「原爆の絵」(広島平和記念資料館)