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human neutrophil ingesting MRSA

AIがスーパー耐性菌(淋菌、MRSA)を死滅させる抗生物質を設計(TED: Jim Collins)

薬剤耐性を持つ淋菌メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を死滅させる可能性のある2種類の新たな抗生物質候補が、AIを使った研究で発見されました。これらの薬剤は、AIによって原子レベルで設計され、実験室内および動物実験で、「スーパー耐性菌スーパーバグ、超多剤耐性菌)」を死滅させました。開発を主導した米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、AIが抗生物質開発における「第2の黄金時代」をもたらす可能性があると述べています。

human neutrophil ingesting MRSA
Colorized scanning electron micrograph of a human neutrophil ingesting MRSA / Wikipedia

抗生物質による治療の効果が及ばない細菌による感染症によって、現在、年間100万人以上が死亡しています。抗生物質の過剰使用により、細菌は薬剤の効果を回避するよう進化してきています。また、新たな抗生物質の不足が数十年にわたって続いています。

科学者らはこれまでも、数千種類の既知の化学物質をAIで解析し、新たな抗生物質となる可能性のある物質を特定しようとしてきました。MITの研究チームは今回、性感染症の原因である淋菌と、致命的な感染症を引き起こす可能性のある MRSAに対する抗生物質を、生成AIを用いて初めから設計するという新たな一歩を踏み出しました。

A generative deep learning approach to de novo antibiotic design / COLLINS LAB

学術誌「Cell」に掲載されたこの研究では、存在しないものや未発見のものを含む3,600万種類の化合物を解析対象としました。研究者らは、既知の化合物の化学構造と、それらが異なる細菌種の増殖を抑制するかどうかのデータをAIに与えて学習させています。

MITのジェームズ・コリンズ教授はBBCに対し、「生成AIを使ってまったく新しい抗生物質を設計できることを示せたので、非常に興奮している」と語っています。「AIを活用すれば、分子を安価かつ迅速に設計できる。この方法で我々の武器を拡充すれば、スーパーバグの遺伝子との知恵比べで優位に立てる」としています。ただし、これらの薬剤はまだ臨床試験の準備が整っておらず、実際に人に対して試験を開始するまでには、さらに1〜2年の改良作業が必要とされています。

英インペリアル・カレッジ・ロンドンのアンドリュー・エドワーズ(Andrew Edwards)博士は、「AIは創薬と開発を劇的に改善する可能性を秘めているが、安全性と有効性の検証に関しては、依然として地道な努力が必要」と述べています。また、英ウォリック大学のクリス・ドーソン(Christopher Dowson)教授は、「AIは耐性菌の出現に対抗するための抗生物質開発において、重要な前進」としながら、経済的な問題として「新たな抗生物質が開発された場合、その効果を維持するためには使用を最小限に抑えることが理想だが、それでは利益を得ることが難しくなる」と述べています。

James J. Collins, PhD
James J. Collins, PhD : Termeer Professor of Medical Engineering and Science / MIT

コロナウイルスのパンデミックが起こる前から、バイオエンジニアのジム・コリンズと彼のチームは、迫り来る別の危機、抗生物質耐性の超耐性菌と戦うためにAIの力と合成生物学を組み合わせました。コリンズは、コロナウイルスとの闘いに役立つ一連のツールと抗ウイルス化合物の開発を開始するための取り組みをどのように推進したかを説明し、今後7年間で7つの新しいクラスの抗生物質を発見する計画を共有します。 (この野心的な計画は、地球規模の変化を巻き起こし、その活動資金を支援する、TEDの取り組み「The Audacious Project」に参加しています。)

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