P-T境界（Permian-Triassic boundary）とは地質年代区分の用語で、約2億5,100万年前の古生代と中生代の境目に相当します。全ての生物種の90%から95%が絶滅（大量絶滅）したことが知られています。原因については諸説ありますが、地球が致命的な高温となり、その状態が500万年も続いた理由について膨大な数の化石を使って解明。すべての植物や熱帯林などが死滅し、「炭素循環」が崩壊したことによるとしています。
- 「大絶滅」で生命の9割が死滅、その後500万年にわたって猛暑 新たな化石がその理由を解明（7/5 CNN）
- Early Triassic super-greenhouse climate driven by vegetation collapse（7/2 nature）
大量絶滅後の出来事は長い間、科学者を困惑させてきました。地球は致命的な高温となり、その状態が500万年も続いたからです。国際的な研究チームが膨大な数の化石を使ってその理由を解明したと明らかにしました。natureに発表された研究論文は、そのすべてが熱帯林に関係しているといいます。
この研究結果は、人類が化石燃料を燃やして地球を温暖化させ続ける未来に対する恐ろしい警告ともなっています。大量絶滅は「シベリア・トラップ」と呼ばれる地域で発生した火山活動に起因すると考えられています。大量の炭素やその他の地球温暖化ガスが大気中に放出され、深刻な地球温暖化を引き起こしました。膨大な数の海洋および陸上の動植物が死滅し、生態系は崩壊し、海洋は酸性化しました。
しかし、なぜ気温がこれほど高くなったのか？ 火山活動が止まった後もなぜ「超温室」の状態が500万年も続いた続いたのかは判然としていませんでした。今回、リーズ大学と中国地質大学の科学者は、熱帯林の崩壊にあるのではないかと考えました。
論文を執筆したリーズ大学地球システム進化学教授のベンジャミン・ミルズ（Benjamin Mills）氏は、このP-T境界（大量絶滅）が特異なのは「植物全てが死滅した唯一のものだからだ」と説明します。
研究チームはこの理論を検証するため、中国の地質学者が数十年かけて集めた中国の化石データのアーカイブを利用しました。化石や岩石層を分析し、過去の気候条件に関する手がかりを得ることで、「絶滅が発生した前」と「その最中」、そして「その後の地球上の各地域に生息する植物や樹木」の地図を再構築することができました。
この結果、仮説は裏付けられ、大量絶滅の間に植生が失われたことで、地球の炭素を貯蔵する能力が著しく低下し、大気中に非常に高い水準の炭素が残留していたことが判明しました。ミルズ教授は、森林が枯れると「炭素の循環が変わってしまう」と指摘。地球上の炭素が大気や陸、海洋、生物の間を移動する仕組み（炭素循環）に言及しました。
ブリストル大学の古生物学教授マイケル・ベントン氏は、今回の研究が「閾値（いきち）効果」を浮き彫りにしていると指摘。つまり、森林が失われることが「生態学的な時間のスケールにおいて不可逆的になる」といいます。現在、世界の政治家はCO2を制御できれば被害を回復できるという考え方を中心に動いています。「しかし、閾値を超えると、生命の回復は困難になる」と述べています。
ミルズ教授も、これが今回の研究の重要な点だと指摘しました。急速な地球温暖化によって将来、地球上の熱帯雨林が崩壊した場合、科学者が懸念している転換点が何をもたらすのかを示しているとしています。
わずかな希望の光もあります。現在、熱帯地方を覆う熱帯雨林は大量絶滅以前の熱帯雨林よりも高温への耐性が高い可能性があります。これが、科学者が次に取り組んでいる課題です。
ミルズ教授は、「そこには転換点がある。熱帯林の気温が上がりすぎると何が起こるのかはよくわかっている。そして、それは極めて深刻な事態だ」と警告します。
