佐藤泰志さんの海炭市叙景(小学館文庫)を読みました。地方都市の18編の物語、それぞれの問題や、苦悩を抱えながら、日々の暮らしが描かれ、一気に読めました。特に「まだ若い廃墟」が記憶に残ります。この小説は1980年代終わりころ(高度経済成長の終盤)に書かれています。
産業構造やエネルギー政策の変化、人口の首都圏集中や公共工事による工業団地、道路建設など、中央集権体制で日本の経済成長を実感している時代です。
この経済成長の裏側で衰退して行くもの、貴重な文化や自然の破壊、価値観の強要なども生じさせていました。
<まだ若い廃墟・ネコを抱いた婆さん・裂けた爪・黒い森・裸足>
映画では18編中5編を取り上げていますが、原作(小説)を先に読んでいたこともあって、ドキュメンタリー映画のような映像は、私の中で叙情的に流れた印象です。
原作を離れても、テーマ追求があって良かったのではと思います。
短編「まだ若い廃墟」や「裂けた爪」は、長編映画にもできるような魅力・共感がありました(^^)
原作を超える映画、夢なのでしょうか。
日本映画は時として「観客の同質性」を前提にしたような製作になることがあります。
その街やその国、あるいは日本人にしか理解できない場面や情景が多すぎて、より多数の観客を対象にしていないと感じてしまう・・・。
「映画は芸術か娯楽か?」みたいな論議は卒業して、日本の成長戦略として発展させたいクリエイティブ文化産業です。