7月29日、MITコンピュータ科学・人工知能研究所(MIT CSAIL)と Microsoftの研究者グループが、メトロポリタン美術館(The Met)と、アムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)に収蔵されている膨大なアート作品について、作品間のテーマやモチーフ、構図などの共通点や類似点を見つけ、「隠れたつながり」を解析する人間の直感に近い特性を持つAIアルゴリズムを作成したと発表しています。コンピュータ科学者や各分野の専門家、クリエイターなどにとってインスピレーションの源泉になる可能性がある興味深いアルゴリズムです。
- Algorithm finds hidden connections between paintings at the Met(7/29 Rachel Gordon | MIT CSAIL)
- An AI Algorithm Developed at MIT Can Spot Similarities Between Artworks Made in Vastly Different Periods of Art History(8/6 artnet)
MIT CSAILの博士課程に在籍している Mark Hamilton氏は、アムステルダム国立美術館で2019年に開催された「レンブラントとベラスケス展」を訪れ、互いにまったく関係のないアート作品が、気味が悪いほど似通って見える点に驚き、作品間の隠れたつながりを探るAIアルゴリズムを開発するキッカケになりました。
- mhamilton.net(Website)
MosAIcは宗教画「聖セラピオン」と油絵「威嚇する白鳥」がどのくらい「近い」かを理解することで、異なる文化、アーティスト、メディアのペア作品または類似作品を見つけます。「人」と「白鳥」という全く異なる対象が描かれて、製作された時代も違いますが、共に似た構図の作品で、さらに根底に「深い利他主義」が込められていることが分かりました。
MosAIcは1枚の画像を起点にして、ユーザーが興味を抱いている文化や領域の視点から「つながり」を明らかにでき、オリジナルのクエリーに最も類似した多数の作品を短時間で洗い出せるようになっています。
Dutch Double Face Banyan(18世紀後半にオランダで着用されていたリバーシブルな男性用部屋着)を指定すると、MosAIcは中国の陶器製の像との類似点を返してきます。このつながりによって、16~20世紀の中国からオランダに向けた市場における陶器類などの流れを追いかけることができます。
Hamilton氏は、「人の直感に近い特性を持つAI検索システムは、芸術だけでなく、人文科学、社会科学、医学などの分野でも役立つ可能性があるとしています。このシステムがより高性能になった場合は、これまで見過ごされてきた意外な情報が発掘されたり、まさかの「世紀の発見」もあったりするかもしれません」と述べています。
- MITの研究者が異なる絵画の「意外な共通点」を見つけるアルゴリズムを開発(7/31 Engadget 日本版)