ウクライナ軍特殊部隊でスナイパーを務めていたアンドリアナ・アレクタ(Andriana Arekhta)さんは、昨年12月に南部ヘルソン州で地雷で負傷して、いま前線に戻るためリハビリに励んでいます。その「勇気」に対してたびたび表彰されています。そして、ウクライナのジャンヌ・ダルクと異名を持つエフゲニア・エメラルド(Emerald Evgeniya)さんが、戦争中に結婚して有名スナイパーから献身的な新米ママへと変貌した物語があります。ウクライナの有名女性スナイパーの戦争と日常、そしてその覚悟をお聞きください。
- 「まるで死をもてあそぶような」 ウクライナの前線で戦う女性兵たち(8/9 BBC News)
- In Real Life: Ukrainian Sniper(5/15 Scripps News)
アンドリアナさんは、2014年にロシアが最初にウクライナを攻撃し、クリミアを併合し、ドンバスに侵攻した時、当時立ち上がったばかりの志願兵大隊のひとつ(アイダール大隊)に加わっています。アイダール大隊は、ロシア政府と国際人権団体アムネスティー・インターナショナルから、人権侵害を批判されています。しかし、ウクライナ軍はBBCに対して、そのような人権侵害の主張を裏付ける中身のある証拠は示されていないと話しています。
小学生の息子がいるアンドリアナさんは、もう7カ月以上息子を抱きしめていないと涙ながらに話します。アンドリアナさんが戦うのは、「自分の息子が生まれ育った国で平和に生きてほしいと願うからだ。両親のように命をかけて戦わなくてもいい、そういう未来を息子のために確保したいと思うからだ」と語ります。
第2次世界大戦以降、女性のスナイパーというイメージは美化されてきたと、エフゲニア・エメラルド(Emerald Evgeniya)さんは言います。その一方で、女性は狙撃手に適しているという評判には、現実的な理由があるのだとも話します。「撃つかどうか、たとえ男ならためらうようなところでも、女は絶対にそんなことはしない。だからこそ、出産するのは男ではなくて女なのかもしれない」。エフゲニアさんはそう言います。
国民的英雄と言われているアンドリアナさんと同様、エフゲニヤさんもロシアのメディアに「処刑人」や「ナチ」などと中傷されています。その私生活や、前線で戦う女性スナイパーとしての日々について、ロシア語であることないことが膨大に書かれています。
エフゲニヤさんは、自分がおそらく他人を殺さなくてはならないのだと、そう気づいた時に感極まったあの感情の揺れは、いまも忘れていないと話しています。「30秒もの間、私は震えていた。全身が震えて、止められなかった。もう後戻りできない。自分はその段階を超えて行動するのだと、気づいてしまったので・・・」
「でも、私たちが戦争を始めたわけではないので。こっちにやってきたのは、向こうの方だ」と語ります。
2014年にロシアが最初にウクライナを侵攻して以来、ウクライナ軍での女性の割合は増え続け、2020年には15%超に達しています。その多くはロシアに対して実戦に臨んでいますが、自軍内ではまた別の戦い(性差別)があるといいます。前線のスナイパーとして結果を出し、実力と自信を確立するまでは、自分もその問題に直面したとエフゲニヤさんも語っています。
ウクライナの女性兵を支援する慈善団体「Arm Women Now(今すぐ女性兵に装備を)」では、女性用の軍服はすでに開発と試験を済ませ、近いうちに大量生産の段階に入るのだということです。
- #ARMWOMENNOW(Website)