7月28日、東京五輪の自転車ロード(22.1km)・女子個人タイムトライアル決勝に出場したアフガニスタン難民のマソマ・アリ・ザダ(Masomah Ali Zada、24)選手は、トップから13分50秒差の25位に終わりました。アフガニスタンにおける少数民族ハザーラ人のアリ・ザダさんの目標は「祖国を離れざるを得ない女性や、スポーツをする夢を諦めざるを得ない女性の希望の光になることです」と述べています。フランス北部の都市リール(Lille)で土木工学を学び始めて2年。学業と自転車競技を両立させています。これからもマソマ・アリ・ザダさんは夢の実現に向けて歩みます。
- 「人類を代表して」五輪自転車競技に臨む アフガン難民の女子選手(7/23 AFPBB News)
- 特集:マソマ・アリ・ザダ:カブールの小さな女王たち(6/6 olympics.com)
アリ・ザダさんはイランで幼少期を過ごしました。タリバンがアフガニスタンを支配していた頃、家族はイランに避難していたのです。妹と一緒に父親から自転車の乗り方を教わったのもその頃です。2000年代半ばに帰国して高校に進学。そこで自転車に夢中になります。
2016年にフランスのアルテ(Arte TV)が制作した「カブールの小さな女王たち」(Les Petites Reines de Kaboul)というドキュメンタリー番組では、女性の自転車競技は不道徳だと考える人々に脅かされながらも、19歳と17歳の2人の姉妹であるマソマ(Masomah)とザーラ(Zahra)が中心の女性サイクリングチームが、カブールでトレーニングを行う様子が描かれています。マソマはわざと車にぶつけられ、その後でドライバーに嘲笑され、さらには彼女や同僚、コーチたちに命を脅かす脅迫も届きました。
元サイクリングチャンピオンであるコーチの支援の下、彼らは毎週カブールの街でトレーニングを行っています。ブルカの地で、長いタイツを着てスカーフをヘルメットの下に押し込み、自転車に乗るのはアフガニスタンの女性だけです。
競技で知名度が上がると、自転車に乗るのをやめさせようとする圧力も強まり、叔父たちもそれに加わったそうです。結局、2017年に家族でアフガニスタンを離れ、フランスで難民認定申請を行ないました。アリ・ザダさんは「自分の国を出なきゃいけないのは、とてもつらいことです。でも他に道はありませんでした。難民なら、この気持ちは分かると思う」と語ります。
アリ・ザダさんは「自転車は自由へのパスポート」と言い、「アフガニスタンに戻ったら、女性と男性のための素晴らしい自転車レースを開催するつもりです」と語ります。そして、アフガニスタンのことわざにはこうあります。『ツバメをすべて殺すことはできても、春の訪れを防ぐことはできない』 と・・・・。