5月28日午後、スイス南部ヴァレー州で巨大な氷河の塊が崩壊し、大量の氷や岩石、泥土がふもとの300人が住むブラッテン村(Blatten)に流れ込みました。村の約90%が土砂に埋もれ、1人が行方不明となっています。ブラッテン村では先週から土石流の危険性があるとして住民の避難が行われていました。専門家からは、「高地では気候変動の影響で、岩盤が不安定になりやすくなっている」との指摘がされています。
- スイス南部で巨大氷河が崩壊、ふもとの村に土石流 1人行方不明(5/29 ロイター)
- スイスの氷河崩落、行方不明者捜索打ち切り(5/30 AFPBB News)
- 氷河崩壊で被害の村、洪水の危険 スイス南部(5/30 swissinfo.ch)

- Blatten (Lötschen)(Website)
- Bergsturz von Blatten(de:Wikipedia)ブラッテンの地滑り(ドイツ語)
スイス当局は、レッチェンタール(レッチェン谷)に堆積した大量のがれきによってせき止められた水が、あふれ出す可能性があると警告しています。
ビルヒ氷河の一部と同時に約300万立方mの岩石がブラッテン村に崩れ落ちた。ヴァレー州当局によると、谷底に堆積した氷と岩石の総量は1,000万立方mに上るとみられます。
「地図からひとつの村が消えた」とヴァレー州の政治家クリストフ・ダルベレイ氏は語ります。「家も、思い出も、教会も、墓地も」、ブラッテンの住民たちはすべてを失ない、農家は耕す土地すらないと話します。

地質学者のハンス・ルドルフ・コイゼン氏は、独語圏スイス公共放送(SRF)に、土砂崩れの理由について「簡単に言うと、クライナー・ネストホルンからの大規模な地滑りによって氷河が崩壊した。地滑りによる岩石が氷河を圧迫し、バランスを崩した」と語りました。同氏によれば、同種の現象・事態はスイスではこれまで起こっていないそうです。
コイゼン氏は、気候変動と今回の土砂崩れを直接結びつけることには慎重な姿勢を示す一方で、「近年アルプスでは、ピッツ・チェンガロなど山頂の大規模な崩壊が繰り返されているのは注目に値する」と指摘しています。
猛暑だった2022〜23年のデータを入れた最新の予測モデルによれば、温室効果ガス排出量が大幅に減らない限り、スイスの最も標高の高い地域の氷河ですらも2100年までに消滅します。スイス氷河の終焉が世界に及ぼす影響はかなり広範囲に及びます。
- スイス氷河の終焉が世界に及ぼす影響(4/21 swissinfo.ch)
