スピノサウルスは、白亜紀中期(約1億1200万~9300万年)に、現在の北アフリカにあたる地域に生きていました。古生物学者たちは、いまある化石証拠に基づき、スピノサウルスは史上最大級の肉食恐竜で全長は15~18mに達した可能性があると考えています。代名詞ともいえる外見的特徴が帆(ほ、英: sail)であり、構造は長く伸びた神経棘とされますが、その機能が生体力学モデリングなどの最新研究で明らかになってきました。
- 「巨大で奇抜な帆」を持つ恐竜スピノサウルス、その機能が明らかに 最新研究(2/22 Forbes Japan)
- スピノサウルス:古生物学(Wikipedia)

古生物学者たちは数十年にわたり、スピノサウルスがなぜこれほど派手な構造に進化させる必要があったのかをめぐって、論争を続けてきました。体温を上げるためのソーラーパネルだったのか? それとも冷却ファン? 配偶相手を魅了する装飾? あるいはひょっとして、水中生活において、船のかじのように使ったのだろうか?
スピノサウルスが半水生だったと最初に主張したのは、2014年に『Science』に掲載された論文です。著者らは同論文において、スピノサウルスは、同じく超大型の肉食恐竜であるティラノサウルスやカルカロドントサウルスとは異なり、純陸生の捕食者ではなかった可能性が高いと論じています。
一部の古生物学者は、これらの形質を考慮した上で、帆は装飾に加えて、流体力学的機能も果たしていたのではないかと考えています。魚のひれのように機能したわけではないが、スピノサウルスが水中を移動し、水圏と陸圏の移行帯で生活するなかで、安定性やバランスの確保に役立つものだった、という可能性です。

2021年に学術誌『Life』に掲載された、より新しい論文で、この仮説を支持するさらなる証拠が示された。著者らは、スピノサウルスの帆を、船の垂下竜骨のようなバショウカジキの背びれと比較しています。バショウカジキの場合、背びれは獲物の追跡中に、頭と尾の側方運動において生じる反力を制御するのに役立っています。スピノサウルスの帆の場合は、河川や湖沼の浅瀬で狩りをするなかで、滑りやすく捕えにくい魚に向かって突進する際に、ローリング(横揺れ)やピッチング(縦揺れ)を軽減していたと、著者らは主張しています。
しかし、こうした流体力学的機能を全否定する古生物学者たちもいます。2022年に学術誌『eLife』に掲載された論文では、生体力学モデルを用いた分析により、スピノサウルスがクジラや海生爬虫類のような高い遊泳能力を備えていなかったことが示唆されています。同論文の著者らは、帆全体が水面下にあるときには、むしろ抗力が生じ、遊泳効率が下がった可能性があると論じています。

現在の研究者たちは、スピノサウルスの帆の存在意義は、ただ一つの機能に還元できるわけではないという見方におおむね合意しています。スピノサウルスの巨大な帆は、彼らが白亜紀で屈指の風変わりな大型捕食者として、河川や湖沼の周辺環境を支配することを可能にした、唯一無二の適応を構成する必須要素の一つとされます。このような考えは、現在広く受け入れられています。
スピノサウルスの帆の研究により、生体力学と生態学が交差する複雑な問題に対して、進化が導き出すさまざまな解決法の一つが浮き彫りになりました。進化は、「装飾」や「水生適応」といった、従来のカテゴリーを超越するような形で、形態と機能を統合するとしています。