ノルウェーの南西部で発見された巨大なリン酸塩の鉱床は、電気自動車のバッテリー、太陽光パネル、農業肥料を少なくとも50年間、世界の需要を満たすのに十分な大きさだということです。2018年にノーゲ・マイニング(Norge Mining)社によって発見され、今年5月に鉱石埋蔵量が700億トンに上ると発表しました。EUがこのリン鉱床発見を歓迎しています。いま世界最大のリン鉱石鉱床は、モロッコの西サハラ地域(約500億トン)にあります。米国の推計によれば、次に多いのは中国(32億トン)、エジプト(28億トン)、アルジェリア(22億トン)ということです。
- ‘Great news’: EU hails discovery of massive phosphate rock deposit in Norway(7/5 EURACTIV)
- Huge mineral discovery in Norway could supply battery and solar panels for the next 50 years(7/11 euronews.green)
現在、世界で採掘されたリン鉱石の約90%は、農業の肥料産業用の「リン」を生産するために使用されています。現在代替品はありません。少量ですが、電気自動車用のリン酸鉄リチウム電池(LFP)のほか、ソーラーパネルや半導体、コンピューターチップの製造にも使用されています。
今後、需要は拡大します。業界連合の「Critical Raw Materials Alliance」によると、高品位のリン酸塩岩の既知の埋蔵量は徐々に枯渇しています。「供給が少ないのに需要が高いということは、価格の上昇を意味します」と報告書は述べています。
リンの精製については非常に炭素集約的なプロセスであるため、現在、産業のほとんどが中国、ベトナム、カザフスタンに集中していると、鉱床を発見したノーゲ・マイニング社の創業者マイケル・ワームザー(Michael Wurmser)氏は説明します。そして、ノルウェーがこれらの鉱物を採掘・精製する際には、二酸化炭素回収・貯留技術を適用して、アジアの競合国が現在行っているよりも厳しい環境基準を遵守できるようになると言います。
- Critical Raw Materials: ensuring secure and sustainable supply chains for EU’s green and digital future(3/16 European Commission)
2021年のネイチャー記事では、生産国は「2008年の中国の輸出関税で見られたように、輸出を制限することで国内供給を守ろうとする可能性がある」と指摘しています。将来における供給混乱を見据えて、グリーン産業やデジタル移行のための主要技術と原料(鉱物)などは、EUによって「戦略的に重要である」としてマークされています。
このノルウェーの巨大な鉱床にはリン酸塩に加えて、バナジウムとチタンも含まれており、これらもEUによって重要な原料として分類されており、航空宇宙産業や防衛産業で使用されています。ワームザー氏は、これらの堆積物がどれほど重要であるかについては言及していないそうです。
- リン酸塩鉱物(Wikipedia)