2009年に経営破綻したノーテル・ネットワークス(Nortel)は、全盛時には世界中で94,500人を雇用していた、カナダを代表する電気通信とデータネットワーキング機器を製造する多国籍メーカーでした。2000年あたりから中国国内にいたとみられるハッカーが、ノーテルの最高経営責任者(CEO)を含む上級幹部7人から盗んだパスワードを使用してネットワークに侵入し、10年にわたってソースコードや技術マニュアル、調査研究リポート、事業計画書、従業員の電子メールなどを含む文書やデータをダウンロードしていたとされます。また、2013年にはノーテルのカーリングキャンパス(Carling Campus)内で電子盗聴装置が発見されていて、産業スパイの標的にされていたことが明らかになっています。
- 中国の攻撃でナンバーワン企業破綻か、トップ継いだのはファーウェイ(7/6 ブルームバーグ)
- Chinese Hackers Suspected In Long-Term Nortel Breach(2/14, 2012 WSJ)
内部調査を主導した勤務歴19年、元ノーテル従業員のブライアン・シールズ氏とウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認したノーテルの文書によると、一部従業員のコンピュータにはハッカーによってスパイ・ソフトウエアも密かにインストールされていたそうです。
誰がノーテルをハッキングしたのか、盗まれたデータが中国のどこに流れたかは誰にも分かりません。シールズ氏やこの事件を調査した多くの関係者が、ファーウェイ(Huawei)を含む国内テクノロジー企業の育成を後押ししていた中国政府の関与を強く疑っています。ファーウェイは、「当時のノーテルに対するハッキングは知らなかったし、関与もしていないと説明。ノーテルから一切情報は受け取っていない。」としています。
確かなのは、衰退するノーテルからファーウェイが大口顧客を奪い、第5世代(5G)移動通信ネットワークでのリードをもたらした人材も引き抜いています。 「明白で簡単なことだ。ノーテルで経済スパイ活動が行われたのだ」とシールズ氏は言います。 「世界のどの事業体がナンバーワンを引き継いだか、どれだけ急激にそうなったかを見たらよい。」と話します。
業績立て直しに精一杯だった当時のノーテル幹部はほぼ無策でした。ファーウェイに対して合併の可能性、ルーター・スイッチの合弁やイーサネット部門売却、さらには救済策の可能性さえ協議しています。どれも実現しませんでしたが、ファーウェイは破綻しつつあるノーテルから、密かに5Gテクノロジーの基盤を開発していた約20人を採用しています。
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