ハンドフィッシュ(Handfish)は、オーストラリアの南部と東部の沿岸海域とタスマニア島周辺に生息。泳ぐよりも「歩く」ことを好み、改変された胸びれを使って海底を動き回ります。このスポッテッド・ハンドフィッシュ(Spotted handfish)は、1996年に海水魚で最初に絶滅危惧種に登録されています。フランスの写真家ニコラ・レミー(Nicolas Remy)さんが苦労の末にクローズアップ写真の撮影に成功し、水中写真コンテスト・オーシャンアート2022のコールドウォーター部門(Ocean Art 2022 – Cold Water)で1位に選ばれています。
- 「手で歩く」希少な魚の撮影に成功、個体数回復の取り組み進行中 豪(2/21 CNN)
- Nicolas & Lena REMY(Website)
水温11度というタスマニアのダーウェント川(River Derwent)の冷たい水の中で撮影に臨み、最初のハンドフィッシュを発見。しかしカメラのフラッシュに驚いて逃げてしまい、とらえることができたのはぼやけた沈泥だけだったそうです。テクニックを駆使しなければこの魚は撮影できないと悟ったレミーさんは3日連続で合計9時間、川の中で過ごしました。
- Meet the Handfishes(Handfish Conservation Project)
スポッテッド・ハンドフィッシュ(Spotted handfish)や、さらに深刻な絶滅の危機に瀕しているレッド・ハンドフィッシュ(Red handfish)とジーベルズ・ハンドフィッシュ(Ziebell’s handfish)については、既に保全の取り組みが進められています。いずれもオーストラリア南東部に生息する種で、残された成体はレッド・ハンドフィッシュが100匹のみ。ジーベルズ・ハンドフィッシュは2007年以降で自然界の目撃情報が途絶えています。
国立ハンドフィッシュ・リカバリーチーム(National Handfish Recovery Team)の専門家によると、ハンドフィッシュは分散能力が低く、個体数が少なく、繁殖力も比較的低いために環境の変化の影響を受けやすく、生息地の減少や汚染、都市開発によって脅かされています。さらに、泳がずに歩く習性のため、海流に乗って環境が悪化した場所を離れるのが難しいのだそうです。
この3種の回復を目指し、個体数の観察、生息地の再生、侵襲種や繁殖しすぎたウニの駆除、水族館と連携した繁殖などの取り組みが進められています。ダーウェント川では産卵を促すための生息環境を人工的に作り出した結果、個体数の安定に向けた有望な結果が出ているということです。
- Handfish Conservation Project(Website)