ウィキペディア(Wikipedia)で、ヒト(Human)のトップ画像になっているのは、タイに住むアカ族の男女の写真です。この「人類を象徴する一枚」に決定するまでの物語は、改めてヒト(Human)を考えさせる興味深いものです。最初にトップ画像に選ばれたのは「パイオニア探査機の金属板」の画像で5年ほど採用されています。しかし、長期にわたる激論の末に(Talk:Human/Image)、Wikipediaの編集者たちは金属板の画像を変更することに決めたそうです。そして、この10年間は、タイの男女が私たち全人類を象徴しています。
パイオニア探査機の金属板は、1972年と1973年に打ち上げられた宇宙探査機パイオニア10号・11号に取り付けられた銘板で、地球外知的生命体に向けた人類からのメッセージを絵で記したものです。「中性水素の超微細遷移」と「男女の姿」「探査機の外形」、「銀河系中心と14個のパルサーに対する太陽の相対位置」そして「太陽系」が描かれたものです。
世界初の地球外知的生命体探査(SETI)を実施したフランク・ドレイク氏によると、この金属板に描かれた「男女の姿」が裸であることについて多くの否定的な反応があったそうです。
「人類を象徴する一枚」には数多くの写真が候補に上がりましたが、2007年に「Silence」という名のユーザーが Wikipediaの「Couples」というページである画像をみつけ、候補に挙げました。SilenceはFAQのなかで、この画像を選んだ理由はアルファベット順と述べています。アカ族(Akha)は「A」から始まるゆえ、ページの上の方にあったのだそうです。
- Akha people(en:Wikipedia)
- ハニ族(ミャンマー、タイ、ラオスにおいてはアカ族)(Wikipedia)
人類と同じ知識を共有していない地球外知的生命体に対してや、未来における人工知能(AI)に対しても「ヒト(Human)を一枚の画像」で象徴させるとすると、どのような画像(写真)を選択するが良いのでしょうか? 人種や文化、ジェンダー(LGBT)などの「違い」「多様性」をもってこそヒト(Human)であるように思います。
日本の著作権法におけるデータベースは「データベースで情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものは、著作物として保護されている」(第十二条の二)と規定されています。Wikipediaにおける体系的な構成と「一枚の写真を決定」する物語は、私たちの人間の創造性と良識を勇気づけるものです。素晴らしい記事の一読をお薦めします。