グリーンランド最大級のピーターマン氷河(Petermann Glacier)を観測する米研究チームは、潮の満ち引きの影響で暖かい海水が陸地のほうへ流れ込んで氷河の裏側を解かし、海面上昇を加速させている可能性があると指摘しています。また、潮の満ち引きがもたらす融解を加算すると、予測される海面上昇は最大で3倍に上ると主張しています。
- Melt rates in the kilometer-size grounding zone of Petermann Glacier, Greenland, before and during a retreat(5/8 pnas.org)
- グリーンランドの氷河、潮の満ち引きで融解加速か 米研究(5/14 CNN)
ピーターマン氷河と海に張り出して浮かぶ「棚氷(たなごおり)」の境界である「接地線」は、1日のうちに潮が満ちたり引いたりするたび、2~6キロ移動することが分かったそうです。その結果、暖かい海水が陸地のほうへ流れ込んで氷河の裏側を解かし、海面上昇を加速させている可能性を指摘しています。カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)と、NASAジェット推進研究所の共同チームが米国科学アカデミー紀要(PNAS)に報告しました。
NASAによれば、グリーンランドで解ける氷は世界の海面が上昇する最大の要因です。上昇はここ数年ますます加速してきましたが、現在の予測モデルは氷の裏側で潮の満ち引きがもたらす融解を考慮していません。チームを率いるUCI教授は、この影響を加算した場合、予測される海面上昇は最大で3倍に上ると主張しています。ピーターマン氷河だけでなく、グリーンランド北部の大半や、南極全体で海に流れ込む氷河もすべて同様だと話しています。
- Petermann Glacier, Greenland(eros.usgs.gov)
- Petermann ice shelf may not recover after a future breakup(5/9 nature)
夏の暖かい空気が氷河の表面を溶かすと、雪解け水は氷に穴を開けて流れていきます。氷河の底まで降りてきた雪解け水は、氷と氷河の間を通り、最終的に氷河の底で噴出し、周囲の海へと流れ出します。(下記YouTube:氷河が溶ける仕組み)
雪解け水は塩分を含まないため、周囲の海水よりもく海面に向かって上昇し、暖かい海水と混ざり合って上昇します。そして、その温かい海水が氷河の底に接触し、氷河をさらに溶かします。その結果、氷河の先端または終端で氷の分裂、つまり氷が割れて大きな氷の塊(氷山)になることを引き起こします。(YouTube:氷河が溶ける仕組み)
- Animation: How a Glacier Melts(11/16, 2020 NASA VIDEO)