2022年の6月にカナダのユーコンで鉱山労働者が大きな発見をしました。先住民の住む伝統的なトロンデック・フェッチン地方(Tr’ondëk Hwëchīn)で、非常に状態がいい3万年前に亡くなった毛長マンモスの子どもの氷漬けを見つけたのです。北極での歴史的な発見はこれにとどまりません。ブレンデン・ロジャーズ(Brendan Rogers)とジェシカ・ハワード(Jessica Howard)さんが、北極の永久凍土に隠された謎に迫ります。
- What’s hidden in Arctic ice? – Brendan Rogers and Jessica Howard(TEDEd)
- ミイラ化した赤ちゃんマンモス、ほぼ完全な姿で出土 カナダ(6/27, 2022 CNN)
2016年には他の金鉱山労働者が、永久凍土で57万年の間保存された生後7週のハイイロオオカミの子どもを発見しています。研究者たちは、狼の子どもが鮭を食べている途中に、巣のあった洞穴が崩れ落ち突然亡くなったものだと推測しています。2020年にはトナカイ飼いが、明らかに熊とみられる残骸を見つけました。しかし、後に3万9,500年前のホラアナグマのものだったのです。この種は2万4,000年前に絶滅しています。
また、永久凍土で見つかった動物の残骸は、体の一部でさえも驚くべき結果をもたらします。2021年に研究者たちは、60万年前のマンモスの歯のDNA配列を復元してマンモスの新種と認定、記録上最古のDNA配列となりました。このような驚異的な発見は動物界以外でもありました。2012年に科学者は花の咲くツンドラ植物を3万2,000年前のリスの巣から見つけた種から再生することに成功しています。
現在永久凍土は急速に融解しており、未発見なままの永久凍土に眠る大昔の死骸はリスクに晒されています。気候変動により北極は、その他の地域よりも3から4倍の速度で温暖化が進んでいます。異常気象による落雷や山火事などの発生頻度が増加して、永久凍土を低温に保っている植物や土壌を燃やしています。
永久凍土には推定1.6兆トンもの炭素を含んでいます。これは2022年現在、地球の大気中に存在する炭素の倍の量で 人類が歴史を通じて消費した化石燃料の総量を超えます。永久凍土は世界で最も大きな炭素貯留庫です。なぜなら、そこには有機物が含まれて、多くは部分的に腐敗した土壌や堆積物の形態をとっています。永久凍土が解け始めると 微生物は有機物をより効率よく分解し二酸化炭素やメタンなどのガスを放ちます。これが負のループを生み出します。より多くのガスが放たれると温暖化が進み、永久凍土をさらに解かし、いっそう多くの温室効果ガスが放たれます。
- 北極の氷が教えてくれること― ブレンダン・ロジャーズ、ジェシカ・ハワード(TED)
- Karin Funaki, Translator Tomoyuki Suzuki, Reviewer(日本語字幕を読む)