北極の温暖化のスピードは、これまで考えられていた以上に全球平均を上回っていることを報告する論文がnatureに発表されています。これまでの北極増幅(Arctic amplification)は、平均して2~3倍のスピードで進行しているとの研究が報告されていました。しかし今回は、北極海の大部分で10年間に0.75度の気温上昇となり、全球平均の少なくとも4倍の気温上昇に達していると発表しています。
- The Arctic has warmed nearly four times faster than the globe since 1979(8/11 Communications Earth & Environment/nature)
- 北極の温暖化は、世界の他の地域のほぼ4倍のスピードで進んでいる(8/12 nature)
今回、Mika Rantanenさんたちの研究チームは、1979~2021年の北極圏の観測データを解析し、この期間中に北極海の大部分で10年間に0.75度の気温上昇があったとする推定結果を発表しました。これは、全球平均の少なくとも4倍の気温上昇となります。北極の温暖化が加速していることは、北極の地球温暖化に対する感受性が現在の推定(2~3倍)よりも高いことを示唆しています。
- Recent Arctic amplification(en:Wikipedia) 最近の北極増幅
さらに、北極海のユーラシア・セクター(スヴァールバル諸島とノヴァヤゼムリャ列島の付近)では、気温上昇が10年間に1.25度のペースに達し、世界の他の地域の7倍のスピードであることが判明しました。Rantanenさんたちは、海氷減少の進行が原因となって北極増幅が時間の経過とともに激化しているという見解を示しています。暗い海の表面は、入ってくる日射の6%しか反射しません(熱を吸収)が、海氷では50〜70%反射します。
また、Rantanenさんたちは、気候モデルによる予測では、1979年から2021年までの北極増幅が一般に過小評価されていた可能性がある点を指摘しています。この北極増幅の背後で働いているメカニズムと気候モデルへの反映に関する詳細な研究を行うことを提唱しています。
- 航空写真から明らかになる氷河の変遷(Nature ダイジェスト)
世界最大の島であるグリーンランドは、その80パーセント以上が氷で覆われています。地球温暖化によってグリーンランドの氷河は融け続けています。過去に撮影された航空写真を利用した氷河の変遷に関する研究です。