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The Antarctic Ice Sheet's Changing Height

南極の氷床融解が後戻りできなくなる「転換点」に至る恐れも

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南極の氷床融解が進むなかで、氷床の下に暖かい海水が少しずつ流れ込んでいる現象が新たに見つかり、海面が予想以上の速さで上昇する可能性が指摘されています。英国南極研究所(British Antarctic Survey: BAS)のチームが、地球科学の専門誌ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)に報告(6/25)しました。この融解サイクルに歯止めがかからず、融解量が突然変化して後戻りできなくなる「転換点」に至る事態も想定されます。海面上昇を予測する現行モデルには、この要因が含まれていないため、実際の上昇は大きく速まる可能性があります。

The Antarctic Ice Sheet's Changing Height
南極地図は氷床の高さの変化を示します。氷床が海水と接触して解けると、氷の高さは減少します(赤で表示)。蓄積が氷の損失を上回ると氷の高さは上昇します(青で表示)。棚氷は灰色で表示されます。/ NASA/JPL-Caltech

BAS研究チームは転換点の時期や、予想される海面の上昇幅を示していません。ただし、南極大陸の氷床ではすでに毎年平均1,500億トンの氷が融解していて、すべて解ければ世界の海面は約58メートル上昇する計算になります。

南極大陸ではこれまで、「終末の氷河」とも呼ばれるスウェイツ氷河など、主に西部での融解が研究されてきました。しかし、BASチームによると、今回の研究では南極東部にある氷河の一部も危機にさらされていることが明らかになったとしています。

南極地図の南極西部(地図左側)のパイン島氷河(Pine Island Glacier)とスウェイツ氷河(左側の濃い赤色領域)は、急速に氷が失われている最大の地域です。停滞しているカム(Kamb)氷河(中央左の青色の領域)は、氷が内部から押し込まれ続けているものの、もはや棚氷に流れ出ないため、急速に蓄積する唯一の主要な場所です。

また、南極東部のトッテン氷河(Totten Glacier)を含む、地図右側地域(赤色領域と点)も氷床融解が加速しているとしています。

SL graph
This graph shows global mean sea level (in blue) since 1993 as measured by a series of five satellites. The solid red line indicates the trajectory of this increase, which more than doubled over the past three decades. The dotted red line projects future sea level rise. Credit: NASA-JPL/Caltech

世界の平均海面は、1993年以降、合計で約9.4センチメートル上昇しています。この上昇率も加速しており、1993年の年間0.18センチメートルから現在の年間0.42センチメートルへと2倍以上に増加しています。

「現在の加速率は、2050年までに世界の平均海面がさらに20センチメートル上昇する軌道に乗っていることを意味し、過去100年間と比較して今後30年間の変化量は2倍になり、世界中で洪水の頻度と災害が増加する」と、NASAの海面変動チームおよび海洋物理学プログラムのディレクター、ナディア・ヴィノグラドヴァ・シファー(Nadya Vinogradova Shiffer)氏は述べています

「Antarctic Ice Mass Loss 2002-2020」では、南極大陸の赤とオレンジは氷の質量が減少した地域を示し、水色は氷の質量が増加した地域を示します。白は2002年以降氷の質量が変化していない地域を示しています。

巨大なトッテン氷河が急速に融解するメカニズム(南極東部)


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