3月21日、世界の国際金融センターの実力と競争力を評価する国際金融センター指数(Global Financial Centres Index: GFCI)の35回目の調査結果が公開されています。ランキングのTop3は、前回調査(2023年9月)と同様、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールの順で変わらず。東京は前回の20位から一つランクをあげて19位となっています。Top20にはアジア圏8都市が入っており、東京(2018年3月まで5位)の低下については、理解できる要因と不自然さも感じます。2020年施行の「香港国家安全維持法」を補完する国家安全条例の施行(3/23)で、香港(4位)の国際金融センターの地位は低下の一途のように思います。
- The Global Financial Centres Index 35(3/21 Z/Yen Group)
- 香港「国家安全条例」きょう施行 さらなる統制強化懸念(3/23 NHK)
このGFCI調査は英コンサルタントのZ/Yen Groupが2007年から年2回の頻度で実施しています。2015年9月から中国深圳にある China Development Institute(CDI)がパートナーとして支援しています。国際金融都市の121都市を「国際金融センターインデックス(GFCI)」で評価しスコア化しています。
下記は2018年(GFCI23-24)のランキング、この年に東京と上海が逆転しています。特徴的な変動(最新2024年の順位)として香港3位(4位)、東京5位(19位)、大阪22位(47位)、上海6位(6位)、北京11位(15位)、深圳18位(11位)、ソウル27位(10位)などがあります。ランキングの変動では日本勢の没落と中国勢の躍進、ソウルの躍進が特徴的です。2015年の中国CDIのサポート時期からランキングの変動が顕著です。
- The Global Financial Centres Index 24(2018年9月 Z/Yen Group)
香港の国際金融センター機能は、これまで中国大陸経済の拡大と「一国二制度」の恩恵でTop3を維持してきました。現在4位をかろうじて維持していますが、民主化運動への弾圧と中国経済の急減速で香港3位(2018年以前)の面影(高スコア)はありません。
香港の「国家安全条例」が規定する「国家機密」には、「中国や香港の経済・社会、科学技術の発展に関する情報」も含まれるなど範囲が広いうえ、具体的に何を「国家機密」とするかは当局の判断に委ねられ、ビジネスで知り得た情報や学術研究論文、メディアの報道やSNSでの自由な発言なども国家機密にあたると判断されそうです。
立教大学の倉田徹教授は、「香港のような国際金融都市にとって重要なのは、情報の自由や、外国人を差別せず誰もが自由に活動できる経済の自由だ。この自由に対して脅威になる法律ができてしまえば、国際金融都市にプラスになるとは考えにくい」と指摘しています。
- 国家安全条例の施行(Googleニュース検索)
- 【香港・国家安全条例の危ない中身】中国への批判・反乱を完全封殺、米国が制裁を強化すれば世界経済の分断決定的に(3/22 JBpress)
国際金融センターランキング(GFCI 35)で、東京は19位、大阪47位と低迷している要因に、もたれあう日本企業の持ち合い株式があるとも指摘されます。日本独自の株式持ち合い(政策保有株式)構造が、一般的にこうした構造を持たない欧米企業と比較して資本リターンが劣る一因となっている可能性があると考えられています。