作家で政治学者のエリフ・シャファク(Elif Shafak)氏は「ポピュリストの扇動家からは、私たちに民主主義が不可欠なことが学べる」と言います。「孤立主義者から地球規模での連帯の必要性を、部族主義から世界市民主義の美しさを学ぶことができる」と・・。トルコ出身のシャファク氏は、多様性を失うことによって生じる荒廃を誰よりも直に経験してきました。そして、彼女は権威主義に対抗するときに、複数の選択肢が持つ革命的な力を知っています。情熱的で個人的なこの講演の中で、彼女は私たちに、政治にも感情にも帰属意識にも二項対立など存在しないことを思い出させてくれます。「複雑であることの恐怖に対して、決して沈黙してはならないのです」とシャファク氏は述べています。
- TED Speaker/TED Attendee: Elif Shafak(Novelist, political scientist)
残念なことに政治理論の主流は、感情にほとんど注意を払いません。分析家や専門家はしばしばデータや指標を見るのに忙しく、人生の中にある計測が難しかったり、統計モデルではクラスタリングするのが難しい事柄を忘れがちです。私はこれは間違いだと思います。理由は2つあります。まず私達は感情的な存在です。人類という存在は、全員そのような存在だと思います。
2つ目の理由は新しいものです。私達は世界史の中で新しい段階に入っています。集団的感情が政治を先導し、ときに誤った方向に導く時代です。かつてないほどの影響力です。ソーシャルメディア、ソーシャルネットワーキングを通じて、これらの感情はますます増幅され、分極化し、世界中をあっという間に駆け抜けます。私たちの時代は不安、怒り、不信感、恨み、大きな恐怖の時代です。ここが大事なところですが、経済的要因に関する研究はたくさんあるにも関わらず、感情的要因に関する研究は比較的に少ないのです。
レバノンの詩人ハリール・ジブラーンはこう言っています。「私はおしゃべりな人々から沈黙を学び、不寛容な人々から寛容を学び、不親切な人々から親切を学んだ」 この時代にとって 素晴らしい標語だと思います。ポピュリストの扇動家から私たちに民主主義が不可欠なことを学び、孤立主義者から地球規模での連帯の必要性を学び、部族主義から世界市民主義と、多様性の美しさを学ぶことができるのです。
“yurt” というトルコ語の単語は「母国」を意味します。「祖国」を意味します。興味深いのは、この単語にもう一つ「遊牧民族が使うテント」 という意味があることです。私はこの組み合わせが好きです。なぜなら、祖国が常に一つの場所である必要はない。こう教えてくれるからです。持ち運べるのです。どこにでも自分とともに持っていけるのです。そして作家には、語り部には、結局のところ一つの大きな祖国があると思います。それは物語の国と呼ばれています。そしてこの単語の味は自由の味なのです。
ありがとうございました。(拍手)
政治学者として、国際関係の学士号、ジェンダー学・女性学の修士号、政治学の博士号を持ち、トルコ・英国・米国の大学で講義しています。オックスフォード大学セント・アンズ・カレッジ名誉研究員や、世界経済フォーラムの評議会メンバー、欧州外交問題評議会(European Council on Foreign Relations)の創設メンバーでもあります。TEDグローバルにも度々登壇して、女性・子ども・LGBTQの人権擁護活動も行っています。
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