アルテミス計画(Artemis program)では、「史上初の女性を、次の男性を」月面(特に月の南極付近)に着陸させることを目標としています。日本でも米田あゆ氏がJAXA史上3人目となる女性宇宙飛行士候補となっています。宇宙における女性の活躍が期待される中で、欧州宇宙機関(ESA)の研究チームが「宇宙飛行士は男性より女性の方が必要な食料や酸素の面で効率的」という興味深い研究論文を発表しました。
- Effects of body size and countermeasure exercise on estimates of life support resources during all-female crewed exploration missions(4/12 nature.com)
- Women in space(Wikipedia) 女性の宇宙における歴史や差別、影響など
上記写真は左下から時計回りに、NASA宇宙飛行士で第23次長期滞在のトレイシー・コールドウェル(Tracy Caldwell Dyson)氏です。NASA宇宙飛行士ドロシー・リンデンバーガー(Dorothy Metcalf-Lindenburger)氏、次はJAXA宇宙飛行士山崎直子(Naoko Yamazaki)氏、そしてNASA宇宙飛行士ステファニー・ウィルソン(Stephanie Wilson)氏、いずれもSTS-131ミッションのスペシャリストです。
ESAの研究チームは、長期的な宇宙探査ミッションにおいて宇宙飛行士が生き延びるために必要な水分補給量、総エネルギー消費量、酸素消費量、二酸化炭素排出量、代謝熱の産生などを男性と女性でそれぞれ分析しました。総エネルギー消費量は同じ身長であっても女性の方が男性よりも5~29%少なく、米国人女性と男性の中央値で比較した場合の減少率は11~41%に達するとのことです。さらに酸素消費量や二酸化炭素排出量、代謝熱の産生にも影響を与えています。(下図参照)
ESAの試算では、国際宇宙ステーション(ISS)の滞在メンバー4人がすべて女性だった場合、1080日間の長期ミッションで必要な食料の重量が合計1,695kgも削減できることが分かりました。NASAによるとISSに荷物を運ぶコストは、1kgあたり9万3,400ドル(約1,300万円)であることから、ミッションにかかる費用をおよそ1億5,800万ドル(約220億円)も節約できる可能性があるとしています。
- Study finds female astronauts more efficient, suggesting future space missions with all-female crews(5/5 Phys.org)
体の大きさや食料は、単に重量だけでなくISS内のスペースも圧迫します。研究チームは、「これらの研究データは、より直径の小さな宇宙居住モジュールへの移行と相まって、将来の有人宇宙探査ミッション中に、すべての乗組員を女性にすることに運用上の利点がある可能性があることを示唆しています」と述べています。
最近、SF映画「3022」を観ました。地球からの通信が途絶え、長期滞在宇宙ステーション内の食料と酸素の残量から乗組員が疑心暗鬼に・・・。また、2名が死ねば、残り2名は助かる!? 酸素不足に陥った宇宙船で繰り広げられるサバイバルを描くSFスリラー映画「2073 スペース・サバイバル」。この映画も「生命維持の極限状態」をテーマにしています。
- JAXA宇宙飛行士候補者選抜の結果に関する記者会見(2/28 JAXA)