米コロンビア大学放射線研究センター(Columbia University Center for Radiological Research)の研究チームは、空港、鉄道駅などの公共スペースで人体に害をもたらすことなく細菌やウイルスを効果的に消毒する手段として、遠紫外線C波(約205〜230nm)に着目して研究に取り組んできました。2018年に「222nmの遠紫外線C波がH1N1亜型インフルエンザウイルスのエアロゾルを効果的に不活化させた」との研究論文を発表しています。現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する効果と安全性について検証をすすめています。
- コロナ禍のゲームチェンジャー? 遠紫外線ランプがウイルスを消毒(5/20 松岡由希子/Newsweek)
- Could a New Ultraviolet Technology Fight the Spread of Coronavirus?(4/21, 2020 Columbia University)
紫外線は波長によって、UV-A、UV-B、UV-Cに大別され、UV-AおよびUVB-は、日焼けや皮膚がんなどの弊害は良く知られています。UV-Cは、その殺菌効果が知られており、光源として人工的に作られて利用されてきました。既存の紫外線ランプの波長は約254nmですが、遠紫外線C波は205〜230nmと短いため、ヒトの細胞には到達せず人体に害を及ぼすことはありません。しかし、空気中や物体の表面にある細菌やウイルスには浸透し、消毒できると考えられています。
研究チームは、新型コロナウイルスと同じくヒトコロナウイルスに分類され、風邪を引き起こすヒトコロナウイルス229E(HcoV-229E)とヒトコロナウイルスOC43(HcoV-OC43)を対象に222nmの遠紫外線C波の効果を検証しました。その結果、遠紫外線C波がこれら2種類のウイルスのエアロゾルを25分以内に99.9%不活化させています。新型コロナウイルスを含め、他のヒトコロナウイルスにも同様の不活化の効果があると考えられています。
研究チームは、遠紫外線C波の安全性を検証するマウス実験にも着手しています。マウスに遠紫外線C波を1日8時間、週5日にわたって照射。研究チームを率いるコロンビア大学のデイビッド・ブレナー(David J. Brenner)教授は、AFP通信の取材に対して「現時点で、マウスに一切の異常は確認されていない」とコメントしています。
- Using the Power of Light: Preventing the Airborne Spread of Coronavirus and Influenza Virus(Columbia University Center for Radiological Research)
従来の照明器具に遠紫外線C波を生成する紫外線ランプを組み込むと、公共施設や空間、乗物などに設置するのが非常に簡単になります。なお日本のウシオ電機(USHIO)は、2015年からコロンビア大学と狭帯域スペクトル紫外線技術の独占ライセンス契約および、研究委託契約を締結。2021年の製品化を目指しています。
- Care222®とは?(専門サイト/USHIO) 原理・効果・安全性・実績など
You can learn more about our research on the use of far-UVC light to limit the spread of COVID-19 and how you can help here: https://crowdfund.columbia.edu/pages/cuimc-research