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少年の発見が植物と昆虫の相互作用に関する 1世紀にわたる知識をひっくり返す

米ペンシルバニア州ユニバーシティ・パーク(University Park, Pennsylvania)に住む8歳のヒューゴ・ディーンズ(Hugo Deans)君は、裏庭の丸太の下にあるアリの巣の近くに小さな球体がいくつかあるのを発見しました。これはタマバチ(昆虫)とオーク(植物)による虫こぶ(gall)の相互作用と、エライオソームと同様の成分を含む虫こぶの付属物「カペロ(kapéllo)/cap」とアリの相互作用を組み合わせた、タマバチの巧妙な「幼虫の保護戦略」と推測されています。1世紀前からの知識である植物と昆虫の相互作用について見直しが指摘されています。

Ant Drags Gall / Penn State University(YouTube)

ヒューゴ君の父親、ペンシルベニア州立大学フロスト昆虫博物館の館長でもあるアンドリュー・ディーンズ(Andrew R. Deans)教授によると、多くの植物と昆虫の相互作用が1世紀にわたり、すでに十分に文書化されていたとしています。

例えばタマバチ(cynipid wasp)は、成長中の子孫の安全を確保するために、幼虫の周りに保護的な「こぶ」を生成するようにオークの木を誘発することが長い間知られています。また、北アメリカ原産の野生の花であるブラッドルートを含む特定の植物は、アリを誘引するために種子にエライオソームと呼ばれる食用の付属物を生成します。これはアリによる種子散布「ミルメココリー(myrmecochory)」と呼ばれます。

ディーンズ氏は、「アリによる種子散布は100年以上前に最初に記録され、植物と昆虫の相互作用の例として生物学の学生に一般的に教えられています」と述べています。

アリが運んでいた虫こぶはタマバチが卵を産み付けてできた虫こぶです。従って、今回観察されたアリの行動は、虫こぶをアリの巣に運ばせて幼虫を保護するという、タマバチの巧妙な戦略なのではないかと推測されています。最も興味深い質問は、進化の過程で最初に来たのはどちらかです。 「エライオソームによる相互作用か? または虫こぶの相互作用か?」です。

バッファロー州立大学のロバート・J・ウォーレン(Robert J. Warren II)教授は、「アリによる種子散布が100年以上前に初めて文献に記され、それ以来研究が重ねられ、学校で教えられてきたことを踏まえると、エライオソームが先だと考えたくなります。しかし、この仮定はいくつかの理由で間違っている可能性があります」と指摘します。

その理由の1つは、「アリによる種子散布を行う植物は植物全体から見ればごく一部なので、アリが種子を持ち帰る習性を獲得するほどの影響力はない可能性があります。しかし、虫こぶは自然界に大量に存在しており、昔は家畜のエサとして虫こぶが重宝されていたほどだ」と言います。

非常に豊富な虫こぶにより、数千年前から「カペロ(kapéllo)」を成長させる戦略を進化させた場合には、それはアリの習性に対する強力な推進力となった可能性があります。「アリは長い間、カペロで虫こぶを拾うことに慣れていた可能性があり、そして、春の野生の花がたまたまエライオソームを持つ種子を生産し始めたとき、アリによる種子散布が始まったのでは・・」と述べています。

ウォーレン教授は、「これらの相互作用がどのように進化し、どのように機能するかを理解することは、地球上の生命の複雑さをもう少し解きほぐすのに役立ちます」と述べています。

Wasp-Oak-Gall Interaction / Penn State University(YouTube)

この虫こぶを発見をした現在11歳のヒューゴ君は、大きくなったら父親のような昆虫学者になりたいかと尋ねられたとき、「大きくなったら、他とは違うユニークになりたい」と答えています。

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