2011年4月発売で、山田太一さんの19年ぶりの書き下ろし力作小説です。山田太一さんの映画やテレビドラマ脚本作品はあまり観ていなかったのですが、人の温もりを描く小説やエッセイは昔から好きでした(^^)
1970年代には倉本聰さん、向田邦子さんとともに「シナリオライター御三家」と呼ばれていました。
Kindle版(700円)で最初に購入した小説です(^^)
最近は単行本を購入することはなくて、文庫化されてから買うことが多くなりました。
まだ少し値段は高いようですが、文庫化されていない小説のKindle版は魅力的ですね(^^)
この小説の内容紹介には、
特養ホームで老婆を死なせてしまった27歳のヘルパー草介は、女性ケアマネの重光さんの紹介で、81歳の老人の在宅介護を引き受けます。
介護する側の疲労、介護される側のいたわり。ヘルパーと老人とケアマネの風変わりな恋がはじまります。
彼らはどこまで歩いていくのか。そして、心の痛みを抱える人々と一緒に歩いてくれる空也上人とは? 重くて爽やかな衝撃作とあります。
六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)は、京都府京都市東山区にある真言宗智山派の寺院。本尊は十一面観音。開基(創建)は空也(くうや)です。(Wikipediaから)
空也は疫病の蔓延(まんえん)する当時の京都で、十一面観音像を車に乗せて引きながら歩き、念仏を唱え、病人に茶をふるまって多くの人を救っています。
応和3年(963年)には、鴨川岸に僧600名を集めて大規模な大般若経供養会を行っています。当時の鴨川の岸は遺体の捨て場であり、葬送の場でもあったのです。
山田太一さんの「飛ぶ夢をしばらく見ない(新潮文庫、1985年)」を読んでからだと思うのですが、人間のどうしようもない業や欲、弱さを描いても、温もりを感じる文章が好きになりました。
この小説「空也上人がいた」でも、生と死が交錯する介護の現場で働く27歳の若者と46歳の女性ケアマネ、そして介護される81歳の老人の避けられない運命。介護とはなにか、老後とは、人の生き方を優しく見つめています。いい小説でした。
- 「海炭市叙景」小説と映画の違い(Nobuyuki Kokai)