米国ではトランプ政権が、研究予算を削減し、エビデンスに基づく医学的助言を拒絶し、研究に対する前例のない政治的統制を行う理由の1つとして、「科学は信頼できない」という考えを援用しています。科学への信頼の低下は、気候変動対策などの緊急を要する政策への支持基盤を崩してしまうだけでなく、ワクチンや医療処置の拒否など、個人の健康を害する判断につながる恐れがあります。世界的な大規模調査で、科学や科学者に対する一般市民の信頼度について、日本は68カ国中で59位と低い水準です。科学的根拠の乏しい情報やデマの拡散により、信頼やリスク評価が歪められています。
- 科学への信頼を巡る意外な真実(7/1 Nature ダイジェスト)
- Trust in scientists and their role in society across 68 countries(1/20, 2025 PMC)
*国や地域ごとの科学者に対する信頼度の加重平均値(1=非常に低い、3=どちらでもない、5=非常に高い)

2022〜2023年に、68カ国の7万2,000人近い人々を対象に実施された最大規模の調査の1つでは、5点満点中3.6点という「中程度に高い」平均信頼スコアが報告されています。シンクタンクであるエデルマン信頼研究所(Edelman Trust Institute、米国ニューヨーク)の研究部門長であるDavid Bersoffは、「科学や専門家に対する信頼が全般的かつ広範に失われているという考えは、全く根拠がないと思います」と述べています。
日本は68カ国中で59位(スコア3.37)と低水準でした。科学的根拠の乏しい情報やデマの拡散を防ぎ、正確な情報の普及を目指して活動するサイエンス・メディア・センター(SMC)や、真偽不明な情報の検証する日本ファクトチェックセンター (JFC)などの活動が重要です。また、社会全体でのメディアリテラシーを向上させる政策や情報発信が求められています。
- なぜ日本の信頼度は低いのか?(AI による概要 / Google検索)
- 一般社団法人サイエンス・メディア・センター(SMC Japan)(Website)

ワーヘニンゲン大学に所属しているNiels Mede博士とスイス連邦水圏科学技術研究所(デューベンドルフ)に所属しているViktoria Cologna博士は、COVID-19のパンデミックが収束に向かっていた2022年6月に、科学への信頼に関する調査に関心のある人々をTwitter(現在のX)で募集しました。彼らのツイートは爆発的な反響を呼び、程なくして約240人のチームが結成され、TISP(科学への信頼と科学に関連したポピュリズム)という国際プロジェクトが立ち上げられ、68カ国で調査が実施されました。
研究者らは、信頼できる科学に基づく情報が、直接の知人やSNS、さらには、増加しつつあるAIからの疑わしい主張や誤情報に埋もれてしまっていることを懸念しています。TISPプロジェクトによると、68カ国のうち53カ国の人々にとって、YouTubeなどのSNSが科学情報の最も一般的な情報源になっていることが明らかになったと言います。2026年4月に出版された信頼に関する英国での研究では、回答者の38%が「情報が多過ぎて、科学に関する真偽を見極めることができない」と答えています。

TISPの調査によると、一般市民は科学者を評価する際に、他の信頼性の指標に比べて、透明性や(例えばフィードバックに対して)開かれているかといった点に、低い評価を付けています。「これらは、科学者や科学コミュニケーターが改善する余地がある点です」とMede博士は言います。また、いくつかの研究により、「科学は不確実なものである」「科学は本質的に進化し続けるものである」と認めることは、事実についての自信過剰な主張よりも、情報に対する信頼度を高めるという考えが裏付けられています(2025年9月号「予防接種に懐疑的な人々をどう説得するか」参照)。Jamiesonは、COVID-19パンデミック中に科学への信頼がいくらか損なわれたのは、新しい研究結果が発表されて結論が変わる可能性があるといった不確実性を、科学者が十分に伝えられなかったためだと指摘しています。
- それでも人々は科学者を信頼している(1/30, 2026 Global Research Center / 早稲田大学)
- 日本学術会議(Gogle検索)
