米原万里(よねはら まり、1950年4月 – 2006年5月25日)さんは、日本のロシア語同時通訳、エッセイスト、ノンフィクション作家、小説家です。2001年の「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」は、世界が分断を深めている今こそ読んでほしいノンフィクションのように思います。民族や国家、主義思想を超えて、登場人物が生きいきと描かれ最高に面白い作品です。
マリさんは1960年から64年の約5年間(9歳から14歳)、旧チェコスロバキア社会主義共和国の首都プラハのソビエト学校で、とくに仲のいい友だち3人とともにロシア語で授業を受けます。
チリチリ天然パーマのリッツァは、まだ見ぬ祖国の青い空に憧れるギリシャ人。マリに大人顔負けの性教育をしてくれたちょっとおませな子で、「男の良し悪しの決め手は歯」が持論です(^^)
走る格好が雌牛に似ているとクラスメートにからかわれているアーニャは、人を大げさに「ソードルシカ」(同志)と呼ぶルーマニア人。呼吸をするようにウソを吐くのが玉にキズだけれど、友だちを大切にするから皆に愛されます(^^)
クラス一番の秀才ヤスミンカは、勉強だけでなく絵も上手なユーゴスラビア人。葛飾北斎が大好きで、いつかウキヨエ・マスターになることを夢見ています。どこか孤独な雰囲気があって、マリの一番の親友になります(^^)
プラハの春(1968年)や1980年代後半以降の共産圏崩壊などを経て、多感な10代を過ごした同級生3人の消息を探し歩くこの作品は、2002年大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています。
この作品では、日本人が日常感じない戦争や紛争、各国の共産党の考え方の違い、宗教、民族の違いなどについても語られます。
マリさんの感性で当時の東欧共産圏の様子が鮮やかに浮かび上がり、素晴らしいノンフィクション作品になっています。
さらっと読めてためになる、米原万里さんの著作を次々に読んでいます(^^)
- 言葉の戦争と平和。(ほぼ日刊イトイ新聞)
- 追悼集 米原万里さんを偲ぶ(ロシア語通訳協会 Website)
AMAZONの作品レビューには、最近(2024年)の書き込みが多いようです。ロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ問題などから、20年以上前の作品ですが色褪せることなく、民族の違いや共産圏の理解から最近読まれる人が増えているように思います。下記紀行ドキュメンターも秀逸な作品です。56歳という早すぎる他界でしたが、ご存命であれば意見をお聞きしたかったです。