米ネバダ州とオレゴン州の州境にある火山跡、マクダーミット・カルデラ(McDermitt Caldera)にあるタッカー・パス(Thacker Pass)には、推定2,000万トンから4,000万トンの「世界最大規模」のリチウムが埋まっているという研究論文が発表されています。これまでの最大のリチウム鉱床は、ボリビアの観光名所でもあるウユニ塩原の約2,300万トンです(下記YouTube参照)。この鉱床発見は史上最大のリチウム埋蔵量となる可能性があります。
- Lithium discovery in US volcano could be biggest deposit ever found(9/6 Chemistry World)
- Hydrothermal enrichment of lithium in intracaldera illite-bearing claystones(8/30 Science Advances)
この研究論文によると、他の場所で見つかる粘土岩のリチウム含有量は、100g当たりせいぜい0.4%未満ですが、タッカー・パスで見つかったイライト(Illite)で構成される珍しい粘土岩は、100g当たり1.3%から2.4%のリチウムを含んでいました。推定でタッカー・パス付近には2,000万トンから4,000万トンのリチウムが眠っている可能性があるそうです。
研究を主導したリチウム・アメリカズ(Lithium Americas)副社長で地質学者であるトーマス・ベンソン(Thomas R. Benson)氏は、「これまでの研究では1,640万年前の噴火により、リチウムがガラス状の火山岩から溶け出してカルデラに蓄積したことが示唆されていましたが、それだけでは驚くほど高濃度のリチウムがどのように蓄積されたのかを説明できませんでした。我々の推測によると、熱水濃縮と呼ばれる現象が発生し、地表の下を移動するマグマがリチウムを地表付近まで運んだのだと考えられます」と説明しています。
その後、クレーター内に「湖」が形成され、何十万年も存続して風化した火山と周囲の物質が湖の底に粘土を多く含む堆積物を形成しました。新しい分析では、湖が空になった後に別の火山活動により堆積物がリチウムとカリウムを豊富に含む高温のアルカリ性塩水にさらされたことを示唆しています。「これまでの研究では、イライトはカルデラのどこにでもある深さまで存在すると推測しており、高温高圧によってスメクタイト(Smectite)がイライトに変化した」と述べています。
今回の研究は、マクダーミット・カルデラの採掘権を獲得しているリチウム・アメリカズが「どの場所を採掘すれば良いか」を考えるときの手がかりとなるようです。2026年にリチウム鉱脈の採掘を始める予定としていますが、地元住民や環境団体からの強い反発も受けています。
- Thacker Pass Lithium Mine(en:Wikipedia) タッカー・パス・リチウム鉱山
私たちは気候変動、生物多様性、生息地の喪失という危機に直面しています。タッカー・パスはキジオライチョウ、プロングホーン、ラホンタン・カットスロート・トラウト、イヌワシなどの絶滅危惧種、固有種の重要な野生生物の生息地です。パイユート語でピーヒー・ムフーとして知られるタッカー・パスは、地域のネイティブ・アメリカン部族にとっての神聖な場所です。
- Protect Thacker Pass(Website) タッカー・パスの保護活動
世界のリチウム埋蔵量の半分以上が確認されているアンデス山脈の塩田では、リチウム蓄電池の需要が急増しているため、採掘会社が動き始めています。しかし、地元の人々は乏しい水源へのダメージや、自分たちの裏庭で起きているホワイト・ゴールド・ラッシュの恩恵を受けられないことを懸念しています。