シュミット海洋研究所(Schmidt Ocean Institute)の研究船に乗船した国際的な科学者チームと乗組員は、サウスサンドウィッチ諸島(South Sandwich Islands)沖の自然環境下で生息するダイオウイカを凌ぐ巨大イカともされるダイオウホウズキイカを初めて撮影しました。体長30cm足らずの透明なイカは、水深600mで3月9日に撮影されました。因みに2025年はダイオウホウズキイカ(Mesonychoteuthis hamiltoni)の特定/命名から100周年になります。
- First Confirmed Footage of a Colossal Squid—and it’s a Baby!(4/15 schmidtocean.org)
- It Took a Century to Find This Colossal Squid(4/15 The New York Times)

自然界で最も見ることが難しい動物の一つで、ダイオウイカとともに世界最大級の無脊椎動物として知られています。体重はダイオウイカよりずっと重いのですが、体長はダイオウイカ(全長は10m以上)と比べると短い体型です。ただ、予想以上に巨大なイカである可能性もあり、成熟個体では触腕を含めた全長が20mに達することがあるのではないかとも言われています。
ダイオウホウズキイカは、最大で体長7m(23 feet)、体重500kg(1,100 lbs)に達すると推定されており、地球上で最も重い無脊椎動物です。ライフサイクルについてはほとんど分かっていませんが、最終的には幼魚のような透明な外観を失います。成魚が瀕死の状態にある様子は漁師によって撮影されたことはありますが、深海で生きている姿が目撃されたことは一度もありません。
独立系の研究者でダイオウホウズキイカが属するサメハダホウズキイカ科の専門家 アーロン・エバンス(Aaron Boyd Evans)氏は、シュミット海洋研究所の探索に参加していませんが、ニュージーランド・オークランド工科大学のキャット・ボルスタッド(Kat Bolstad)准教授と共に、撮影された個体の種を独自に確認しています。
エバンス氏は4月15日の記者会見で、「おそらくティーン・エージャーのイカと考えられる」と説明します。完全な成長までにはまだかなりの時間がかかるが、幼生というわけでもないため、60種が知られているサメハダホウズキイカ科で、最も謎の多いダイオウホウズキイカの一生の解明に向けた知見が得られると期待を寄せました。
- 【動画】深海で初、巨大イカのダイオウホウズキイカの撮影に成功(4/17 ナショナル ジオグラフィック)
ボルスタッド氏は「ダイオウホウズキイカは、独特な触腕を使いマジェランアイナメのような亜南極の大型魚やほかのイカを捕食しているようだ。吸盤に覆われた8本の腕の真ん中には、動かないかぎ爪が1つずつ付いている。腕より長い2本の触腕の先端には、360度回転するかぎ爪がある」と説明します。また、「その名前とは裏腹に頂点捕食者ではない。ゾウアザラシやペンギン、魚類が子どもを、マッコウクジラやオンデンザメが子どもと大人を捕食する」としています。
1月25日には、前回の遠征隊のチームが、南極大陸近海の南極海で、氷河イカ(Galiteuthis glacialis)の姿を初めて確認できる映像を撮影しました。G.glacialisは、これまで自然環境で生息が確認されたことのない、もう一つの氷河イカの一種です。