貝殻のない貝の仲間ウミウシ(海牛)で、自ら頭部と胴体を切断した後、頭部から心臓を含む胴体を再生する種が発見されました。奈良女子大学・水圏生態学研究室の大学院生三藤清香(Sayaka Mitoh)さんが飼育している「コノハミドリガイ」と「クロミドリガイ」で胴体再生を確認、遊佐陽一(Yoichi Yusa)教授と共に論文を米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に発表しました。
- Extreme autotomy and whole-body regeneration in photosynthetic sea slugs(Sayaka Mitoh* and Yoichi Yusa / Current Biology)
- Meet the Sea Slugs That Chop Off Their Heads and Grow New Bodies(3/8 The New York Times)
- ウミウシ、頭から胴体再生 自ら切断後―寄生動物排除が目的か・奈良女子大(3/9 時事ドットコム)
三藤さんは「2018年にコノハミドリガイの頭と体が分離しているのを偶然見つけ、頭が元気そうに動いていたので驚いた。近いうちに死ぬと思っていたら、餌を食べて体が再生したのは衝撃的だった」と語り、「他種でも見つかる可能性があり、自切の進化を調べたい」と話しています。
ウミウシの一部は、餌の藻類から葉緑体を取り込み、光合成をさせて栄養を得ています。コノハミドリガイなど2種も、盗葉緑体現象として知られている能力があり、新しい胴体の再生まで生存できるそうです。
体長3~4センチのコノハミドリガイの観察では、頭部から胴体を切り離した後、数時間で餌の海藻を食べ始めたそうです。約1週間で心臓を含む新しい胴体が再生し始め、約3週間でほぼ再生しました。切断は首の決まった位置で起きるとみられ、細い糸で軽く絞めると自切を誘導できたそうです。(下記の動画を参照)
動物が尾や足を自ら切断する「自切」は、トカゲのしっぽ切りが有名です。ウミウシも体の一部を切断、再生する種がいますが、心臓がある胴体を新しく再生する種が報告されたのは初めてです。敵から逃げるため切断するのではなく、胴体に巣くい、産卵を妨げる寄生動物の排除が目的と考えられるそうです。