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高速で飛翔する最小羽毛甲虫に潜む飛行メカニズム

世界最小の昆虫の1つである鞘翅ハネカクシ上科ムクゲキノコムシ科昆虫(Ptiliidae)が、高速で優れた飛翔性能を発揮するのは、独特の飛翔メカニズムと軽量のふさ状の翅(はね)のためである可能性を明らかにした論文が、Natureに掲載されました。一般的に生物のサイズと飛行速度は比例しますが、体長が1ミリの半分にも満たない395μmの羽毛甲虫ですが、体長が3倍の昆虫と同じ速度で飛ぶことができるそうです。

Fig. 3: Aerodynamic forces acting on the wings of P. placentis. / nature
(a)羽毛甲虫の翅の大きな羽ばたき運動と鞘翅の小さな振動。(b)シミュレーションにより可視化されたホバリング時の渦流れ。(Farisenkov et al. (2022)より) / 国立大学法人千葉大学

Alexey Polilovさんたちは、P.placentis(学名:Paratuposa placentis)の翅の構造と動きを3D化して統合しました。その結果、この羽毛甲虫のふさ状の翅は、同じサイズの膜状の翅に比べて8割も軽量であるだけでなく、これまで知られていなかった動き方をすることが明らかになりました。

また羽毛甲虫の羽ばたきサイクルは、2回の翅の打ち下ろしで大きな上向きの力を生成し、その後、2回のゆっくりとした打ち上げで小さな下向きの力を生成するというもので、このサイクルによって羽ばたきの振幅が増加します。鞘翅(硬くなった前翅)は、胴体の過度な振動を抑制するブレーキとして機能します。

国際研究チームは、このような適応は、小型昆虫が小型化する過程においてこのような優れた飛翔性能が維持された過程を説明でき、この適応が、小型昆虫の進化的成功の重要な要素となっている可能性があると結論付けています。

千葉大学の劉浩教授は「小さなサイズの昆虫がなぜ羽毛状の翅をもっているのか、それを使ってどのように飛んでいるのかは30年来の謎でした。今回、国際研究チームと一緒にこの謎の解明に貢献できたことをとても嬉しく思います」と述べています。

また、東京工業大学の大西領准教授は「今回、目に見えないほど小さな昆虫の飛翔の解析で、新たな発見に貢献できたことをとても嬉しく思います。今後もスパコンを活用して、環境に潜む流れの科学的解明に取り組みます。」と述べています。
 

体長395μmの最も小さな羽毛甲虫(学名:Paratuposa placentis) / nature

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