ベストセラー Hillbilly Elegy(ヒルビリー・エレジー)の著者 J.D.ヴァンス(J.D. Vance)氏は、米オハイオ州南部の通称「ラストベルト」と呼ばれる工業地帯にある小さく貧しい町に育ち、ヘロインの蔓延、破綻した教育制度、離婚や暴力により引き裂かれた家族など、現在のアメリカにはびこる多数の社会問題を目撃してきました。米ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー第1位の回顧録「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」を原作として、2020年にロン・ハワード監督により映画化されています。
- TED Speaker: J.D. Vance(Author)
ヴァンスさんは TEDの講演で、「アメリカンドリーム」を見失うとはどういう感覚なのか説明し、地域のリーダーから政策立案者を含むすべての人が考えなければならない質問を投げかけます。
アメリカの忘れられた街に住む子供たちを絶望から解放し、より良い暮らしを送れるようにするために、私たちに何ができるでしょう?
本のタイトルになっている Hillbilly(ヒルビリー)は、田舎者の蔑称の意味をもち、1730年代に移住してきたスコットランド系アイルランド人をいうようです。
ヴァンスさんは、彼らをこう説明します。
「貧困は家族の伝統だ。祖先は南部の奴隷経済時代には日雇い労働者で、次世代は小作人、その後は炭鉱夫、機械工、工場労働者になった。米国人は彼らのことを、ヒルビリー(田舎者)、レッドネック(無学の白人労働者)、ホワイトトラッシュ(白いゴミ)と呼ぶ。でも、私にとって、彼らは隣人であり、友だちであり、家族である」
つまり、「米国の繁栄から取り残された白人」だといいます。
ヴァンスさんがヒルビリーと呼ぶ故郷の人々は、トランプ次期大統領のもっとも強い支持基盤と重っています。「米国の労働者階級の白人」を、これほど鮮やかに説明する本は他にはないと言われています。
- トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実(渡辺由佳里/Newsweek)
- ヒルビリー・エレジー (光文社未来ライブラリー) 文庫 – 2022/4/12(Amazon)
エッセイスト、翻訳家の渡辺由佳里さんが、大統領選挙でトランプ氏を歓迎した白人労働者階級が理解できる素晴らしい回想録として紹介しています。興味深い本です。
映画ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌(Hillbilly Elegy)は、回顧録「ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち」を原作とした実話に基づいています。
オハイオ州南部出身の元海兵隊員で、現在はイェール大学ロースクールの学生であるJ・D・ヴァンス (ガブリエル・バッソ) は、夢の実現を目前にして、心の奥に追いやった田舎の家族のもとに帰郷せざるを得なくなります。アパラチア山脈の町で彼を待ち受けているのは、薬物依存症に苦しむ母親ベヴ (エイミー・アダムス) との確執をはじめとする複雑な家族模様。彼を育ててくれた、快活で頭の切れる祖母マモーウ (グレン・クローズ) との思い出に支えられ、ヴァンスは己の人生を歩んでいくために、消すことのできない家族の歴史を次第に受け入れ始めます…。
- 映画「ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌」(IMDb) Ratings: 6.7