グリーンランドの巨大氷河(ヘルハイム・グレイシャー)が崩壊するタイムラプス動画があります。2018年6月22日の現地時間午後11時30分に始まり、約30分かけて行われたものです。カービング(氷山の分離)と呼ばれる現象で、これほど大規模な分離を目撃、撮影できるのは珍しいそうです。NASA(OMG)によれば、グリーンランドの氷の融解は、世界全体の海面を年間0.8ミリのペースで上昇させており、世界のどの地域よりも上昇値が高いそうです。
- Scientists Capture Breaking of Glacier in Greenland(Jul 9, 2018 NYU)
- Oceans Melting Greenland(OMG)(NASA)
グリーンランドの巨大氷河崩壊とメカニズムの解明
基準がない状態では、その大きさが分かりにくいものです。分離した巨大な氷山は、幅4マイル(約6.4km)、高さ1.5マイル(約2.4km)、奥行き1マイル(1.6km)以上もあり、重さは100億から140億トンの間です。その大きさ(10.24平方キロ)はローワー・マンハッタン(下記画像)に匹敵、東京23区では中央区、荒川区、台東区の面積にもなります。
ニューヨーク大学(NYU)の海洋学者デイヴィッド・ホランド(David Holland)の研究チームは、グリーンランドの氷河の動きを10年間にわたって観察。ホランド氏は「グリーンランドにおける氷河崩壊のほとんどが、このように大規模かつ短時間で起きている。だからこそ、この動画は貴重なのだ」と語ります。彼のチームは、分離した氷河が世界中の壊滅的な海面上昇に影響する仕組みについて研究しています。
2018年10月に取りまとめた IPCC特別報告書「1.5°Cの地球温暖化」について、グテーレス国連事務総長は声明で「異常気象の増大、海水面の上昇、北極海氷の後退など、気候変動の影響は私たちの周囲の至る所に現れています。科学者たちは、1.5°Cと2°Cの気温上昇の差について、これまでで最も明瞭な全体像を描いています」「0.5°Cの温暖化の差は、世界をまったく違うものにしてしまいます」と述べています。
報告書は同時に、温暖化を1.5°Cに止めることはまだ可能であることも示しています。
- 重量100億トン超! 巨大氷山が崩れ落ちる瞬間をカメラがとらえた(2018.07.29 Wired.jp)
- グリーンランドの巨大氷河崩壊、温暖化の謎に迫れるか(2018.9.22 ロイター)
- 1.5°C特別報告書のポイントと報告内容が示唆するもの(地球環境研究センター)