気候アパルトヘイト(climate apartheid)という言葉は、国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書(6/25)で使用され、いま注目されています。アパルトヘイトは人種差別について使われる言葉ですが、「温暖化が貧困を生み、格差を広げている」と指摘し、このままでは人種差別と同じような事態になりかねないと強い危機感を表した言葉で、この言葉が途上国だけでなく先進国でも強く意識されるようになっています。
- 温暖化が広げる格差 「気候アパルトヘイト」(12/15 NHK) おはよう日本
- 気候変動が生む、新たな「アパルトヘイト」(9/19 Mina Kosaka/GNV)
- World faces ‘climate apartheid’ risk, 120 more million in poverty: UN expert(25 June 2019 UN News)
地球温暖化は、ともすると人類の誰もが同じように被害者だと考えがちになりますが、人々をふるいにかけてしまう側面もあります。報告書で、最初に「気候アパルトヘイト」を指摘したニューヨーク大学のオーストン教授(Professor Philip Alston)は、再生可能エネルギーへの転換などと同時に、温暖化の影響を受ける人たちへの「補償」が必要だといいます。
オーストン教授は、「裕福なエリートが何もせず、引き続き化石燃料への投資から利益を得続けているかぎり、われわれは“気候アパルトヘイト”という体制のもとにあります。しかし”気候アパルトヘイト”という用語で重要なのは、南アフリカのアパルトヘイトが崩壊したのと同じように、持続不可能だということです。政府は、化石燃料から再生可能エネルギーに転換する計画を進めなければなりません。それによって、温暖化がすすめば財産を失ってしまう人たちに、何らかの補償を与えることもできるのです。これには、本当に大きな経済再編が必要です。」と指摘します。
12月23日、気象庁は2019年の天候と台風のまとめを発表しました。日本の年平均気温の速報値は基準値(10年までの30年平均)を0.92度上回り、1898年の統計開始以来最も高温となる見通しです。地球温暖化が影響しているとみられています。台風については29個が発生、うち15個が接近、5個が上陸しました。いずれも平年値(発生25.6個、接近11.4個、上陸2.7個)を上回っています。
- 2019年の平均気温、歴代最高 気象庁(12/23 日本経済新聞)
全米気候評価(NCA)の第4次報告書では、温暖化に伴い、ハリケーンがより勢いを増し破壊的になると予測しています。一方で、温暖化によってハリケーンを押し流す風の速度が下がり、ハリケーンは進み方がより遅く、降水量がより多くなることを示唆する研究結果も増えているそうです。
- ハリケーンや台風 温暖化でますます強力に?(9/7 National Geographic)