6月17日、スイスの国際経営開発研究所(IMD)は、主要64カ国・地域を対象にした2021年版「IMD世界競争力ランキング」を発表しています。Top3では昨年3位のスイスが首位となり、2位はスウェーデン(昨年6位)、3位はデンマークとなりました。米国は米中貿易戦争の影響で10位(昨年も10位)のまま、中国は16位(昨年20位)に順位を上げ、また香港は中国の統制強化で7位(昨年5位)とさらに後退。台湾は8位(昨年11位)に躍進しています。そして、日本は31位(昨年は過去最低の34位)になっています。
- Europe dominates, China rises, and the US remains stable in 2021 World Competitiveness Ranking(6/2021 IMD)
2021年IMD世界競争力はコロナ禍により、初めてスイスが首位になりました。上位の国々では感染拡大の規模ではなく、COVID-19パンデミックの前に一定の経済的バッファーがあり、危機に対して機能したとしています。
この報告書では、イノベーションへの投資やデジタル化の促進、社会福祉政策の充実やリーダーシップの資質が、社会的な結束をもたらし、経済が危機を乗り越え、競争力の上位にランク付けできるようにしたことを示しています。
台湾は2013年以降の最高順位8位(昨年11位)に躍進しています。今年の「IMD世界競争力ランキング」では、コロナ禍に対応して新たに経済複雑性指数(economic complexity index)を設けています。この指標は主に一国の輸出品の多様性と独自性を測ろうとするもので、台湾は世界で2位に評価されているようです。
- IMD世界競争力ランキング、台湾は世界8位に躍進(6/18 Taiwan Today)
日本の2021年IMD世界競争力ランキングは31位です。4分類の「経済状況」が12位(昨年11位)、「政府の効率性」は41位(41位)、「ビジネスの効率性」が48位(55位)、「インフラ」が22位(21位)です。COVID-19パンデミックの影響もありますが、デジタル化やグローバル化に対応できない日本特有の「日本病」は改善していません。
三菱総合研究所(MRI)の酒井 博司氏による「IMD世界競争力年鑑2021からみる日本の競争力」が掲載されています。2005年からIMD「世界競争力年鑑」の編集協力をしており(日本調査担当)、競争力に関する分析を各種行っています。
「競争力を構成する個別項目を詳細にみることで、日本の主たる強みと弱みを示す。さらに、64カ国・地域の個別項目のデータを用い、統計的な手法を用いて個別項目を分類することを通じ、日本の競争力の「弱み」を改善する方向性を検討する。」と述べています。一読をお薦めします。
- 第1回:結果概観(10/7, 2021)
- 第2回:個別項目からみた「強み」「弱み」と競争力強化の方向性(10/8, 2021)
酒井 博司氏が、IMDの世界競争力年鑑の統計データや評価、経営層アンケート調査などについて詳細に説明しています。特に近年においては、「グローバル化」「ICT化」「人材」の3点が重視される傾向にあるとしています。過去最低になった日本の「2020年世界競争力」の現状分析、日本の強みと弱み。そして、経営層の意識と競争力改善ポイントなど興味深い内容でした。
- 第1回:日本の総合順位は30位から34位に下落(10/8, 2020)
- 第2回:強い「科学インフラ」と低迷する「経営プラクティス」(10/16, 2020)
- 第3回:統計と経営層の意識の乖離から競争力改善ポイントを探る(10/29, 2020)