スイスのジュネーブ大学のレーザー避雷針プロジェクト(Laser lightning Rod Project)チームは、巨大な高出力レーザー装置を標高2,500メートルのゼンティス(Säntis)山頂に運び上げました。レーザーを空に照射して、ハイテクの避雷針の役割を果たす実証実験をします。チームを率いるスイス人物理学者、ジャン・ピエール・ウォルフ(Jean-Pierre Wolf)教授は、20年以上にわたってレーザー研究に取り組んでおり、特にレーザーによる気象の制御を研究してきました。気象災害の増大で注目分野です。
- 巨大レーザーで落雷制御を試みる、「ハイテク避雷針」となるか スイス(7/15 CNN)
- The Laser Lightning Rod project(Website) Not SSL
高出力レーザーにより、電子を原子から直接引きはがすほど強力な電場を生み出すことで、雷の発生という自然現象を模倣して強化し、雷の形成に必要な正負の電荷を生じさせます。狙いは、雲による放電を制御された形で引き起こすことです。
「理論上、レーザーは避雷針の役割を果たして直撃寸前の落雷を捕捉するとともに、他の落雷を誘発することもできます。これはつまり、雷雲を放電させて電圧を下げ、周辺地域へのさらなる落雷を未然に防ぐことを意味する」とウォルフ氏は語ります。
新型コロナウイルス禍による1年の遅れを経て、レーザーはこのほどスイス・アルプスにある標高2,500メートルのゼンティス山の山頂に運ばれました。ウォルフ氏は「ここは欧州で最も落雷を受ける場所のひとつだ」と説明します。「1年に100~400回も被雷する電波塔があるため、実証実験に最適な場所となる」と話します。
ウォルフ氏は、このレーザーは1秒間に1,000回発射される。非常に強力なため、「単一パルスのピークパワーは、世界の全ての原子力発電所によって生み出される出力に匹敵する」と言います。ただし、これは極めて短い時間です。
安全上の理由から、レーザーの作動中は幅5キロの飛行禁止区域が設けられる見通しです。航空機にリスクは及ぼさないものの、光源を直接見るのは人間の目にとって有害となります。レーザーを作動させるのは常時ではなく、雷の活動の増加が検出された時のみとなります。
実証実験は雷の季節が終わる9月まで続けられ、それに成功すれば次の実験は空港で行われる可能性があるということです。数年以内に実用化できる可能性があります。
- Un laser pour traquer l’éclair(5/10 Université de Genève)