薬物耐性てんかん患者が、モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ ニ長調(K.448)」(以下、モーツァルトK448)を30秒間以上聴くことで、脳内でてんかんに関連した電気的活動のスパイクの頻度が低下することと関連している可能性が明らかになりました。さらに研究結果(モーツァルトK448効果)では、楽曲に対してポジティブ感情を伴う応答を生じさせることが、治療効果に寄与している可能性のあることも示唆しています。詳細を記述した研究論文は、Scientific Reports に掲載されています。
- Musical components important for the Mozart K448 effect in epilepsy(9/16 Scientific Reports)
- 健康:モーツァルトの楽曲は薬物耐性てんかんの治療法として有効か(9/17 Nature Japan)
これまでの研究で、「モーツァルトK448」を聴くことが、脳内でてんかんに関連したスパイクの頻度が低下することに関連していることは明らかになっています。しかし、聴いている時間がどのような影響を及ぼすのか? また、その理由については明らかではありませんでした。
今回、Robert Quonさんたちは、薬物耐性てんかんの成人患者(16人)に、「モーツァルトK448」を含む、いろいろな楽曲の断片(長さ15秒または90秒)を続けて聴かせました。そして、脳波記録法(EEG)を用いて、楽曲を聴いている患者の脳内の電気的活動を測定しました。その結果、「モーツァルトK448」を30秒から90秒聴いた場合に、てんかんに関連する脳全体の電気的活動のスパイク数が平均66.5%減少し、他の楽曲ではこうした効果が認められませんでした。
「モーツァルトK448」の長い繰り返しの部分が終わるところを聴いた被験者の前頭皮質では、電気的活動の一種であるシータ活動(シータ波)が増加しています。シータ活動は、音楽に対するポジティブ感情を伴う応答との関連が示唆されています。
結論として、今回の研究結果は「モーツァルトK448」による音楽刺激が、薬物耐性てんかん患者の発作ゾーンの内外でIED(Interictal Epileptiform Discharges)率を低下させる可能性があることを示しています。「モーツァルトK448効果」には、治療的神経反応を誘発するための約30秒の下限があることを示し、前頭皮質によって調節される感情ネットワークの活性化に影響を与える、両側前頭領域におけるIEDの優先的減少の証拠を提供しています。さらなる解明が期待されます。
ルーカス&アーサーユッセン(Lucas & Arthur Jussen)は、オランダのピアノデュオ(兄弟)です。
- Lucas & Arthur Jussen(公式サイト)
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