欧州委員会は2021年4月に起案したAI法案(Artificial Intelligence Act)に、文章生成AIのChatGPTや画像生成AIのStable Diffusion、Midjourneyなどを展開している企業に対し、生成AIモデルの開発で使用した著作権を有する学習データの開示を義務づける条項を盛り込みました。この法案は欧州議会、EU理事会、欧州委員会の三者対話(トリローグ)に進み、法案の最終的な詳細が検討されます。EUの一般データ保護規則(GDPR)のように、EUの「AI法」は包括的な世界標準になる可能性があります。
- Europe to ChatGPT: Disclose Your Sources(4/27 Sam Schechner / WSJ)
Proposed legislation requires developers to list copyright material used in generative AI tools - 「チャットGPT」にEUが要求:情報源を開示せよ(4/28 Sam Schechner / WSJ日本語版)
生成系のAIは、インターネットにあふれる何十億もの文章、画像、動画を学習することで高精度なコンテンツを生み出せているのですが、学習データの中に著作権で保護されたコンテンツが含まれている可能性があることがたびたび指摘されています。EUはこうした状況から、AI法案に「学習データにおける著作権情報の開示を義務づける」条項を盛り込みました。この法案が2023年4月に入り改めて検討され、成立に向けて次の段階へ進むことが決まりました。
このAI法案が可決されると、自分たちのコンテンツがどの程度学習されたのかを把握したいクリエイターにとって追い風になります。著作権で保護されたコンテンツが学習されたことが分かった場合、著作者が利益の分配を求めたり、訴訟を起こしたりできるようになる可能性があります。
議論の核心は、AI開発企業が自社の生成AIモデルにフィードするためにインターネットからコンテンツをスクレイピングする法的権利を持っているかどうかです。AI法案の追加条項は、その論争を解決するものではありませんが、コンテンツの権利所有者と政策立案者に情報を提供することになります。
EU議会のルーマニア人議員であり、AI法に関する同機関の作業を共同でリードしているドラゴシュ・トゥドラシュ(Dragoș Tudorache)氏は、「これは、コンテンツ権利者に門戸を開くもの」であり、私たちの目標は、「生成AIモデルの説明責任、透明性、精査を高めることです」と述べています。
追加修正した新AI法案では、ChatGPTを含むすべての生成AIを管理する組織が規制の対象となるため、こうした組織はAIの運用について高い透明性を確保する必要があります。
- 画像生成AI “クリエーターの権利脅かされる” 法整備など提言(4/27 NHK)
- UPDATE 1-欧州議会委員会、AI利用巡る規則案で合意 著作権の透明性確保(4/28 ロイター)
- News/Media Alliance AI Principles(4/20 News/Media Alliance)