Netflix(ネットフリックス)は1998年、世界初のWebサイトによるDVD郵送レンタルサービスを開始、この25年間で約52億枚のDVDを届け、2010年のピークには約2,000万人が利用していました。サービス利用者の減少により9月29日で終了しています。Netflixのストリーミングサービスへの資源集中と競争激化の経営環境から、DVD郵送レンタル事業の終了は必然でしたが、DVDのレコメンド機能やレンタル希望一覧リストの廃止で私たちが失ったものとは何でしょうか?
- Netflixの「レンタルDVD」発送サービスの終了と、勝利したアルゴリズムの功罪(9/30 Wired)
- DVD郵送レンタルサービスを停止したNetflixの苦しい現状とは(7/7 Forbes Japan)
DVDは、CDと同様の使い勝手で高画質な映像を視聴出来ることから、2000年代以降の映像記録の主要メディアに位置づけられ、VHSやレーザーディスクを置き換える形で普及しました。
DVDレンタルサービスのNetflixや Amazon.comなどの特定のビジネスモデルを説明するために、WIREDの編集長だったクリス・アンダーソン氏が「ロングテール」(デジタル配信と少量生産によって、小さな映画やニッチなファッショントレンドが、収益を上げられる規模の顧客を見つけることで大企業を凌駕できるという理論)を提唱したものですが、DVDレンタルサービスのロングテールは死を迎えました。
DVDレンタルサービスは、ストリーミングサービスよりはるかに多様なラインナップを揃えていて、最新作やヒット作ではないマイナー作品、B級作品を視聴する機会も提供していました。何気なく偶然に観た映画、思わぬ発見は私たちに大きな楽しみとワクワク感を提供してきました。
生成AIの進化や、高度化していくレコメンド機能は、膨大な数の映画や文学、芸術などの一期一会の機会や、偶然の発見など、人間の創造力や発想力、多様な価値観を奪って行くかも知れません。
DVDやCD、ディスクなどの物理的な媒体は、人件費や流通コストの負担を考えると、技術革新とともに消えていく運命のように思います。ただし、米国には世界最大の米国議会図書館や美術館、博物館や科学館などの充実、そして、1907年に設立されたCASやGoogle、Wikipedia、Internet Archiveなどの巨大データーベース、Amazon.comなどなど、ロングテールな情報収集システムと検索システムがあります。
世界中の人々が創造したすべての文化遺産とコンテンツをデジタル化してデータベースにします。そして、人に優しい超高速検索システムが人間の創造力や発想を支援、引き出す近未来を目指して・・・。