11月7日、国連環境計画(UNEP)は、気候変動による被害を抑えるための先進国から途上国への気候適応資金は280億ドル(2022年)となり、前年比の増加額は60億ドルで過去最大とする報告書(Adaptation Gap Report 2024)を発表しました。ただ、2021年の国連気候変動会議(COP26)で決めた、25年までに380億ドルに増やすという目標には届いていません。今年、世界の平均気温が産業革命前と比べ初めて1.5度以上高くなり、観測史上最も暑い年となることが確実です。しかし、次期トランプ米大統領によりパリ協定からの再離脱や環境投資の大転換も予想され、2030年の温室効果ガス削減目標の達成が困難になることが懸念されています。
- 気候変動関連情報(Googleニュース検索)
- Adaptation Gap Report 2024(11/7 UNEP)
- 2024 is on track to be the warmest year on record(11/7 WMO)
- トランプ再選、気候対策に打撃 今後予測される影響は?(11/7 MIT Technology Review)
気候変動の影響は、すでに脆弱なコミュニティに対して最も大きな打撃を与えており、早急に行動を起こさなければ今世紀中に2.6~3.1度の危険な気温上昇に見舞われることになります。世界各国が確約した気候適応資金を基に、適応支援の取り組みを強化する必要性があります。途上国に対する国際支援は拡大していますが、資金ギャップは依然として大きく、気候適応計画は十分なリソースを得られず進展は停滞しています。
気候リスクの高まりに直面しているコミュニティを支援するには、資金調達、能力構築、技術移転に対する大胆で協調的なアプローチが必要です。気候適応への変革的アプローチが不可欠です。十分な資金を調達した集団行動は、世界中の人々と生態系を保護するのに役立ちます。
UNEPの適応ギャップ報告書(Adaptation Gap Report 2024)の発表を受けて、国連のグテーレス事務総長はビデオメッセージで警鐘を鳴らします。
気候災害は新たな現実です。そして私たちはそれに追いついていません。過去6か月を振り返ってみましょう。
5月: 東アフリカとブラジルで洪水が発生。アジアで熱波が発生。
6月: メキシコ、中東、米国で記録的な猛暑。
7月: カリブ海史上初のカテゴリー5のハリケーン。
8月: ギリシャの都市が炎に包まれる。
9月: カテゴリー5の台風11号が東南アジアを襲う。南米で記録的な山火事が発生。カトリーナ以来最悪の米国ハリケーン(Hurricane Helene)。
10月: 洪水がサヘル地域の危機を悪化させ、スペインでは大混乱を引き起こしました。スペインではわずか8時間で1年分の雨が降ったと伝えられる。
これらの見出しの背後には、人類の悲劇、経済と生態系の破壊、そして政治の失敗があります。
COP29では新たな気候資金目標を実現する必要があります。そして、債務問題への取り組みを推進し、多国間開発銀行の融資能力を大幅に増強し、民間資金をはるかに多く活用する可能性を高めることで、「未来のための協定」をさらに強化します。発表の報告書では、中国以外の発展途上国が適応に必要な額よりも多くの金額を債務利子の支払いに費やしていると推定している。
私たちは危機の核心である温室効果ガスに取り組まなければなりません。G20は、2030年までに排出量を年間9パーセント削減し、化石燃料を迅速かつ公平に段階的に廃止し、再生可能エネルギー革命を加速させ、地球の気温上昇を1.5度以内に抑えるという世界的な取り組みを主導しなければなりません。
最後に、「気候危機は現実です。保護を先延ばしにすることはできません。今すぐ適応しなければなりません」と述べています。
- Adaptation Gap Report 2024(11/7 UNEP)
- Secretary-General’s video message to the Launch of UNEP’s Adaptation Gap Report(11/7 UN)
- 2024 State of Climate Services: Five-year Progress Report (2019–2024)(11/7 WMO)