WIRED（ワイアード）が展開する「Tech Support」に、権威主義の研究を行う歴史学教授のルース・ベン=ギアット（Ruth Ben-Ghiat）氏が登場しました。インターネット上に寄せられた、独裁者や独裁政治に関する質問に答えます。全米ベストセラーとなった「新しい権威主義の時代-ストロングマンはいかにして民主主義を破壊するか」の著者でもあるベン=ギアット教授が「独裁者に共通する性格の特徴と手口」を説明しています。
- 歴史学者だけど「独裁者」について質問ある？| Tech Support（4/15 Wired）
- Ruth Ben-Ghiat（Website）
最初の質問：”ファシズムの意味を教えて”
ファシズムとは全権を握る独裁者が統治する一党独裁国家であり、権力分立が消滅し独立した司法制度も存在しません。ムッソリーニが1920年代に作った言葉です。”すべては国家の中に、外には何もない”とも言いました。また、領土拡張を唱えるもので、領土の征服や帝国主義はファシズムの本質です。ファシズムは暴力なしに成立しません。
ヒトラーもフランシスコ・フランコもムッソリーニも皆、暴力で世界を変えようとしました。あるカテゴリーの人々を敵と宣言し、ナチス・ドイツでは人種が、イタリアやスペイン・フランコ政権では政治的な敵が対象でした。敵は排除されるべきと考えられ、独裁国家は暴力の行使を中心に組織化されます。
一般の人々の警戒心をあおり、密告させ自ら暴力を行使するよう訓練します。暴力がファシズムの根幹を成しているのです。
質問：”独裁者や暴君が持つ共通の性格、特性は何ですか？”
皆ナルシストで、自分のことしか気にしません。独裁者は注目され崇拝されます。彼らはカリスマ的で演技がうまく演説が巧みです。権力維持のために何でもします。独裁者は被害妄想の傾向があり、”内なる聖域”を構築します。助言者を内輪で固め、そこには家族が含まれることもあります。彼らは自らのプロパガンダにとらわれ、虚構の世界に生きるようになり、正しい判断ができなくなります。
2022年、ウラジミール・プーチンは軍や経済専門家に十分相談せずにウクライナに侵攻しました。その結果、初期に軍は大きな損害を受けました。独裁者には道義的な規範がなく、誰とでも同盟を結びます。ヒトラーは共産主義者のスターリンと一時的に同盟を結び、今日では共産主義者の習近平が極右のプーチンと手を組んでいます。マキャベリの”目的のためには手段を選ばない”は独裁者の性格を見事に表しています。
質問：”なぜ集会を開くのですか？”
権威主義者は称賛や自己を演じる機会を好みます。集会は大勢の人々が忠誠を示すために集まる場です。
質問：”独裁者や志望者はなぜ多くの国土を求めるの？”
独裁者の本質のようなものです。より力が欲しい、もっとコントロールしたい、より多くの資産が欲しい。地位を悪用し、もっと天然資源が欲しい。同じ物語が繰り返されています。物語は国家の純粋性です。例えばナチスにとってドイツの征服だけでなくオーストリアに進出したのは、彼らが同族で国家統一の神話を持つからです。
そして現在、共産主義者である習近平は当初から台湾は中国の一部だったという考えを持ち、再統一の必要性を訴えています。プーチンとウクライナも同様でウクライナの征服を再統一と呼んでいます。これらは帝国主義を正当化する物語で独裁者たちは何度も利用します。権威主義的傾向を持つトランプ大統領が再び権力を握り帝国主義を語り、カナダがアメリカの51番目の州になる話やグリーンランドの支配権の話には驚きません。
質問は以上です。ありがとうございます。
