コンテンツへスキップ
Terry Kupers

人と関わらないと、脳はどうなってしまうのか?(TED-Ed: Terry Kupers)

  • TED

誰にでも一人の時間は必要で、静かに過ごす一人の時間にはストレスを和らげる効果があります。しかし、孤独を強制された場合、その影響は驚くほど広範囲に及びます。人によって症状の出方は異なりますが、孤立が長引くほど症状は重く、長く続きます。では、孤立は私たちの身体や脳に具体的にどのような影響を与えるのでしょうか。テリー・クーパーズ(Terry Kupers)教授が解説します。クーパーズ医学博士(MD、MSP)は精神科医であり、矯正施設における精神衛生と独房監禁の有害な影響に関する専門家です。

Terry Kupers
What happens to your brain without any social contact? – Terry Kupers

もし誰かが無期限に同じ場所に閉じ込められ、数日、数週間、数か月、あるいは何年も、一人きりで何の生産的な活動も出来ないと、身体に多くの変化が 起こる可能性があります。それが何か、そしてなぜ起こるのか見てみましょう。

初期にはストレスホルモンが急上昇し、やがて、ストレスは慢性化することがあります。社会的な交流や、意味のある活動は心の安定に不可欠です。これは他者とのやり取りによって、「社会的現実の検証」つまり、自分の認識の妥当性を測る場を確保できるからです。こうした交流や仕事が奪われると、自己認識や現実感が脅かされます。思考が脳内を渦巻き、衝動に支配されることで、うつ、強迫観念、希死念慮、さらには妄想や幻覚が現れることもあります。

What happens to your brain without any social contact?
What happens to your brain without any social contact? – Terry Kupers

この不安定な状態が長期にわたると、脳の偏桃体といった恐怖や、ストレスを制御する部位が過敏で過活動な状態になります。一方で、前頭前皮質、つまり推論や道徳的判断を行う脳の中枢部は萎縮し、集中力、記憶力、認知が低下します。全体として、思考のバランスは理性から感情へ傾きます。その状態が続くほど偏ったバランスが常態化し、不安、怒り、非合理的な行動が増えていきます。国連や多くの人権団体、専門家たちはこうした強制的で長期にわたる隔離を拷問とみなしています。

独房監禁を経験すると、出所後の社会復帰が困難になるそうです。独房監禁の経験者は、PTSDの症状が3倍出やすくなります。性格の変化や不安、被害妄想が増えるという報告もあります。集中することや対人関係も苦になります。

social contact
What happens to your brain without any social contact? – Terry Kupers

独房監禁を米国に導入したのはクエーカー派で、18世紀後半のことでした。体罰に代わる手段として、内省と懺悔(penitence)を促すと考えられていました。「penitentiary(刑務所)」の語源です。

独房監禁は更生に反し、甚大な被害をもたらします。刑務所内の暴力抑止にも効果はありません。一方、他国ではより人道的な方法をとっています。ノルウェーでは人口当たりの受刑者数が米国より少なく、受刑者一人あたりにかけられる設備費、授業料、職業訓練費は米国の5倍です。ノルウェーは釈放後の再犯率も低く、世界有数の最低水準国です。つまり、人と一緒にいた方が立ち直れるのです。

social contact?
What happens to your brain without any social contact? – Terry Kupers

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください