2月17日午前9時22分、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、新型主力ロケット「H3ロケット」2号機を種子島宇宙センターから発射しました。JAXAによると、機体は予定の高度約680Kmに到達し、搭載した超小型衛星の分離に成功しました。この2号機は「試験機」の位置づけ、H2Aロケットより衛星の打ち上げ能力を1.3倍に高めています。既製部品を使ったり、3Dプリンターを用いて部品の数を減らして低コスト化を図り、打ち上げ費用をH2Aの半額の約50億円に下げることを目指しています。
2022年時点でのファルコン9の打ち上げ費用は6,700万ドル(当時のレートで約84億円)ですが、スペースXを率いるイーロン・マスク氏はファルコン9ブロック5の限界費用は1,500万ドル(約23億円)だと主張しています。
三菱重工がコスト削減により約50億円のコストを実現できたとしても、スペースXの低コスト化を進める攻勢によって「相場水準がさらに下がってしまえば、コスト競争力だけで勝負できるかは不透明」とコメントしています。一方、ロケットビジネスで大きな成功を収めているアリアンスペース(Arianespace)もまた、コスト半減を目指す次世代低コストロケットのアリアン6の開発を進めています。
- H3ロケット国際競争力と課題(Wikipedia)
日本が米国主導の月軌道プラットフォームゲートウェイ(Lunar Gateway)へ参加することを受け、従来の国際宇宙ステーション(ISS)よりも遠くに物資を運搬する必要が生じました。この増強型ロケットの実現には、ゲートウェイ以外においても大型ロケットの需要を増やす必要があると考えられます。米国政府が出資する有人宇宙飛行(月面着陸)のアルテミス計画では、様々なロケットの使用が予定されています。
- アルテミス計画(Wikipedia)
- 再使用型宇宙往還機(Wikipedia)
JAXAは単段式の再使用型ロケット実験機CALLISTOの成果を元に、将来の大型ロケットにおいて1段目再使用を行うかを検討する考えを示していました。2021年5月12日、文部科学省は、使い捨て型のH3ロケットが50億円でコストで競争力に欠けるため、2030年打上げ目標の次世代機の第1段を再使用型にし、現在のファルコン9ブロック5に近い25億円というコスト半減を狙う方針を固めました。また2040年代には更にコストを削減し1回の打上げを、H3ロケットの10分の1(5億円)とするとしています。
- HTV-X新型宇宙ステーション補給機(JAXA)
- Lunar Gateway(en:Wikipedia)